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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

#検察庁法改正に抗議します。「では、検察の暴走はどう食い止めますか。検察は人権侵害したことはないのですか」愛読者からのご質問にお答えします。

2020年05月17日 | #安倍晋三が諸悪の根源

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内閣が思いのままに上級検察官の定年を個別に延長したり、すえおいたりできるという、時の政権に都合のいい検事を量産するマシーンになりかねない検察庁法改悪案。

これが権力を分散し、それにより均衡・抑制し合う憲法原理である権力分立に反することはすでに述べました。



また、この改悪案が権力分立の典型である三権分立違反とされるのは、検察庁が行政組織でありながら、刑事裁判においては検察官の起訴がなければそもそも始まらないという重要な役割を果たすという意味で、司法権を担う裁判所に準じる、準司法機関と呼ばれ、やはり盲目的に内閣に従わないところに大きな意味があることを意味しています。





ですので、法律上、検察官は「公益の代表者」(検察庁法第4条)とされ、刑事事件を捜査・起訴できる公訴権を持つ唯一の機関ですから、元検事総長らの方々の意見書にはこうあります。

「検察官の責任の特殊性、重大性から一般の国家公務員を対象とした国家公務員法とは別に検察庁法という特別法を制定し、例えば検察官は検察官適格審査会によらなければその意に反して罷免(ひめん)されない(検察庁法23条)などの身分保障規定を設けている。検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たないのである。」。

安倍首相や吉村大阪府知事、忖度コメンテーターや与党と維新議員のいう、検察庁も行政組織だから、その人事権は内閣が掌握して当たり前、という発想が、権力分立・三権分立という憲法原理と全体の法秩序に反していることは明白です。





このブログの長年の愛読者、ラベンダさんから以下のようなご質問を頂きました。

このブログにしては珍しく、きっちり回答しましたので、ご覧ください、

「今回の自分のコメントは検察庁法改正法案への抗議に下手をすれば水を差すコメントになるかもしれませんので、不快だったり馬鹿じゃないのかと思えば削除してくだされたほうが幸いです。

ある疑問がどうしても払拭できず、弁護士としての宮武さんの意見で2つほど聞きたいことがありまして、取るに足りなければそのまま無視していただいても構いません。

今回の「検察庁法改正法案」が露骨な安倍内閣(行政機関)による検察(司法)の私物化狙いであるというのは多くの専門家が指摘した通りで、このことに異論の余地はありません。

最高権力者、総理大臣でさえも悪事を行えば法律に基づき司法の手で罰せられるべきなのが国家の最低限のあり方であり、今回の保身身贔屓法案(不逮捕特権)と呼ぶべきもので安倍内閣は最低限の人道さえ破壊しようとしている、この指摘も当然の事で同意です。

では、検察の最高責任者及び検察が、法律的にも人権的にも悪事を行った時(直接的犯罪はもちろん逮捕の乱用及び冤罪をつくるのも辞さない粗雑•乱暴な捜査などの間接的犯罪など)にその犯罪を追求•審議し、責任者を明確に訴訟する中立的な第三者機関的なものは用意されているのでしょうか?

 これについて私が多分見落としているだけだとは思いますが、この辺の疑問が今回の安倍腐敗の極み政権の司法私物化以前からぼんやりと疑問に思っていまして。

また、個人の感覚的なものになりますが、過去から現在まで検察ないし検察組織は民主主義あるいは人権主義を守っていると思いますか?

最後に、改めまして私は明確に検察庁法改正法案に抗議します!このことは揺るぎません!」






これに対するわたしの回答。

「ラベンダさん、おはようございます!

検察が暴走するときのストッパーが、法務大臣から検事総長に対するいわゆる指揮権です。
悪名高い指揮権ですが、これもまた権力分立を根拠とする制度です。

刑事訴訟法上、検察官一人一人に起訴権が独占的に与えられています(これを抑制するのが一つは検察審査会)。

検事の暴走は上司による決済システムで公正化が図られています。
その一番上が検事総長です。

検事総長が暴走して、すべきでない起訴をするとき一定の要件で検事総長がストップできるのが指揮権です。

逆にいうと普段は指揮権を発動しない限り、検察官の起訴に政権も文句が言えなくなっています。

このように独立性の高い検察庁を法務大臣が抑制均衡を図るのが指揮権です。
もっぱら佐藤栄作氏の逮捕を止めたなど、悪い歴史が残ってますが、本来は意味のある制度です。

さて、では、検事総長と法務相や政権がつるんで悪いことをしたら誰が止めるのか。。。

これが、黒川問題の本質です。
止める行政機関はもうありません。
恐ろしい話です。

あとは違法行為を彼らがすれば司法、それに限らず不当な行為をすれば民主主義=選挙で止めるしかありません。

ですからここで、両者が癒着しかねない定年延長自由自在法案は止めないとですね❣️」






追記
もう一つの、検察庁が人権を守ってきたか。
これについては、私は非常に懐疑的です。
元検事総長らの意見書にもちらっと出てきた大阪地検特捜部の証拠改ざん事件は氷山の一角。
これまでのえん罪事件の多くが単なる間違いではなく、やってもいない無実の人から警察と検察が自白を採取してしまっています。
被告人に有利な証拠を隠すことも何度もありました。

しかも、ただの一度も、えん罪事件で担当検事が処分されたことはありませんし、それどころか、国家賠償請求が検察官や裁判官の行為について認められたことさえありません。

この点は、ゴーン氏やホリエモン氏が指摘してしている人質司法と言われる長期の身柄拘束と、弁護人の立会いなしの長時間の取り調べで、どれだけ人権侵害が行われてきたか、大変な地獄のような状況だと思いますが、それが当たり前になっている元検事の方々にはわからないでしょう。

この点と検察庁法改正案の関係については、我が司法試験予備校講師時代の教え子、亀石倫子弁護士のホリエモン氏に対するリプが明快です。

刑事司法には、人質司法など深刻で重大な問題が山積してることはその通りだけど、だからといって今回の検察庁法改正が「些末な事項」「クソどうでもいいこと」にはならない。
#検察庁法改正案に抗議します
#検察庁法改正法案に抗議します

 
解釈することにしたってなんやねん。



さて。

かつて、「ミスター検察」と呼ばれた元検事総長の伊藤栄樹氏は、こんな言葉を残しています。

「不幸にして法務大臣の指揮に関し、法務大臣と検事総長の意見がくい違ったというような場合に、検察権を代表する者としての検事総長は、指揮が違法でないかぎりこれに盲従するという態度は許されない」
(伊藤栄樹『新版検察庁法概説』より)

内閣の一員である法務大臣が管轄する検事総長以下検察庁は、必要とあればその捜査の矛先を内閣や与党にも向けるべき存在。

検察が公正であるようコントロールする必要性と、検察が独立性を持つ必要性。

そのどちらにも傾きすぎてはならない。

安倍首相の言い訳のような単純な図式では図れない問題なのです。






新型コロナ対策の緊急事態宣言をどう解除していくのか。

市民の命を守りながら、生活はどう保障するのか。

そんなダントツに大切な問題そっちのけで、やることですか、検察官の定年延長。

お隣の韓国で、大統領をやめた途端に逮捕、ってことが立て続けに起こるのを横目に見ながら怖くなってしまったのでしょうか?

だとすると、よほど悪いことをしてんのかなと痛くない?腹を探られても仕方ないですね。

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1 コメント

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Unknown (ラベンダ)
2020-05-18 17:10:34
「内閣の一員である法務大臣が管轄する検事総長以下検察庁は、必要とあればその捜査の矛先を内閣や与党にも向けるべき存在。
検察が公正であるようコントロールする必要性と、検察が独立性を持つ必要性。
そのどちらにも傾きすぎてはならない。」

検察庁法改悪について、まさにこれにつきると思います!
記事を読めば大体推察できると思いますが、今回、私が無理を承知で一連の質問を宮武さんに投げ掛けた理由として、検察庁法改悪に抗議している人々(自分含む)が腐敗しきった内閣憎しのあまり(本当に腸煮えくり返る内閣だ)知らず知らずの内に、同じく改悪に抵抗する検察組織を英雄視し、すっかり性善説を置いてしまう(検察組織による人権侵害をますます免罪する)のではという懸念を抱いていて、そこで弁護士として知識の豊富な宮武さんに記事のタイトルにもある疑問をぶつけた次第です。
宮武さんにはそれらの疑問に専門的意見で非常に丁寧に解説いただいたこと改めて感謝します! (亀石さんにも)
この記事に書かれたこと(特に上記)を忘れず、検察庁法改悪に断固抗議していきたいと思います!(秘密保護法や共謀罪にも)
今こそ安倍一味の犯罪を白日のもとに暴いてやろう!

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