ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「密度が濃い」「面白くて疲れた」熱い反応続々のオンライン集中講義で工夫したこと

「すごく密度が濃い3日間でした」「講義が面白くて、集中して疲れました」「本当に楽しい時間でした」 「自身の中で新しい発想が生まれました」「私が求めていた大学の授業は、こういう授業だと思い出しました」 ー オンラインで実施した法政大学社会学部の寄付講座・集中講義「ローカルジャーナリズム論」は、多くの受講生から予想以上に「熱い」反応が続々と届きました。

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オンライン化に当たり工夫したこと

 各地の大学で秋学期がスタートし、オンラインか対面かといった議論がメディアを賑わしていますが、オンラインの集中講義でも満足度を高め、充実した授業ができるという手応えを得ました。今回は、オンライン化にあたり工夫したことを紹介します。

自分の大学時代を振り返ると、集中講義は「数日で単位が取れる(ラッキー)」さと朝から夕方まで学べる「合宿感」があり、このどちらも重要なポイントとして設計しており、多摩キャンパスで行った昨年度はそれが実現できました。しかしながら、2020年度はコロナウイルス感染症の拡大により、オンラインで実施することになりました。オンラインで一日PC画面を見続けるのも辛く、一人では「合宿感」も乏しくなるだろうと予想し、授業の進め方を見直すことにしました。主に取り組んだのは以下の3点です。

  • 100分の授業を講義・質問記入・回答に3分割する
  • グループでのワークショップや振り返りを設定する
  • 事前・事後課題を設定し、学修時間を確保する

100分の授業を3分割する

授業はzoomを活用し、リアルタイムで実施しました。教室での授業ではゲストの話を聞き、受講生にはリアクションペーパーを書いてもらっていました。しかし、オンライン講義は単調になりがちで、リアルタイムで60分を超えての講義、それが何コマも続くと集中力が持たないだろうと判断しました。

そこで、講義は40分程度にまとめてもらい、その後に15分間、質問と感想を書く時間を確保しました。受講生には、GoogleフォームのURLを共有し書き込んでもらい、講師側にはその書き込みをリアルタイムに見てもらいながら、回答候補を検討してもらうようにしました。リアルだと、ついゲスト講師と教員が話をしたりしてしまいますが、誰も話さない時間をしっかり確保しました。受講生には確実にフィードバックが行なえます。

講師側からは、教室では表情や雰囲気から学生の反応を感じられるが、オンライン講義では反応が分かりにくいので心配する声がありましたが、質問と感想を見ながら反応を確認し、回答で補足できるのが良かったとの意見がありました。なお、クラウドを使い慣れてない講師には事前テストをお願いしました。

ワークショップや振り返りを設定

講義だけでなく、ワークショップや振り返り、質問コーナーを設けて、授業のスタイルに変化を作りました。ワークショップでは、シティプロモーションの提唱者である杉山幹夫さんにLocalWikiの取り組みと書き込み方を、NHK#あちこちのすずさんチームに、ローカルメディアと連携した企画の作り方をレクチャーしてもらった上で、zoomのブレイクアウトルームを使い、グループワークをしてもらいました。
講師と受講生の双方向性だけでなく、受講生同士もアイデアを出し合うことで、オンラインではありますが、同じ授業を受けていることを少しでも感じてもらえるようにしました。

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振り返りには、その日の登壇者に集まってもらい、(登壇者には自分以外の講義やワークショップをできる限り見てもらうことをお願いした)お互いの取り組みを議論したり、浮かび上がってきたテーマを深堀りしたり、しました。

受講生からは「振り返り議論があることで、他の講師の方々の視点でもう一度考えることができ、とっても楽しいです」や「振り返り議論後半にはついて行けなくなってしまったので、まだまだ自分の勉強が足りないことを痛感しました」という感想もあり、刺激となったようです。

事前・事後課題の設定

コロナ渦において文部科学省からも弾力的な授業運営が示されてるところですが、学修時間を確保することは重要です。そこで、NHKの#あちこちのすずさんの視聴やローカルメディアについて調査してくるという事前課題を、3日間の集中講義を終えてローカルメディア・ジャーナリズムを考えてもらうなどのレポートを事後課題として用意しました。

記事で提示しているスケジュールは、12コマとなっていますが、ワークショップで学んだことを実際に取り組むなどの自宅学習の課題を出して14コマ分を確保、さらに日ごとの振り返りも行ってもらったので、受講生にとっては相当ハードなものとなったことは間違いありません。

社内中継などちょっとした工夫

また、各地の新聞・テレビなどのローカルメディアの寄付により成立しているという特徴を生かし、スマートフォンで社内を中継してもらうといったお願いもしてみました。「社内を中継したり、日本各地からの中継といったオンラインならではの講義手法も随所にあり、面白かったです」と学生からの反応も上々でした。

首都圏出身者中心となっている学生にローカルメディアを知ってもらうという集中講義の目的からしても、このような取り組みは価値があると感じました。来年度以降に授業がリアルになっても、中継は取り入れてみたいと思います。

リアルにも役立つオンライン化の知見

オンライン化に当たり、100分の授業時間をどう使うかを明確に提示したことでリズムが生まれ、受講生側にも何をやるのか明確になったこと。質疑と回答、さらに振り返りを行うことで立体的に学びが理解できること、という点はリアル授業においても重要なポイントです。シラバス執筆時に、授業の目標やそれぞれの時間の位置づけは検討していましたが、学生の反応を見ながら展開するための幅を残そうとして、曖昧な部分が生まれていたとの反省があります。

zoomなどのウェブ会議システムやGoogleフォーム・スプレッドシートなどツールを使えるようになることはもちろんですが、学びを構造化し、設計することが不可欠であり、この構造化と設計こそオンライン化において勝負を分けると言えるでしょう。

講師の皆さんにも熱心に講義やワークショップを実施して頂いたことに加え、同僚の先生方のサポートや学生アシスタントの活躍も充実した集中講義には不可欠で、相応のコストは当然ながら必要になります。その費用の一部は、沖縄タイムス西日本新聞中国新聞東海テレビ博報堂ケトル (順不同) 5社寄付により支えられています。ありがとうございます。 

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