- 本文の内容
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- 人材育成 「教育未来創造会議」初会合
- 賃上げ政策 賃上げ企業、入札で優遇
- 行政デジタル化 法令4万件、AI検証
真の人材育成のためには、文科省による「支配」からの脱却が必要
政府は先月27日、教育未来創造会議の初会合を開きました。
その中で岸田首相は「人への投資は成長の源泉。誰もが夢や希望を持てる未来を創造できるように教育や人材育成に政府一丸となって取り組んでいく」と表明。
遠隔授業で取得できる単位数の上限緩和や,大学の学部再編で文系、理系の枠を超えた人材育成に取り組む考えを示しました。
「人への投資は成長の源泉」という趣旨には賛成ですが、具体的な取り組み内容には全く賛成できません。
私に言わせれば、文科省そのものを廃止すべきだと思います。
文科省が定めているルールや指導要綱には今の時代に合わないものがたくさんあります。
そして、そのルールに適した学校が補助金などで優遇されるというのもおかしいと思います。
極端な言い方になりますが、今の制度は文科省が「お金で支配する」仕組みだと感じます。
もっと公平にすべきで、教育を受ける人に直接的にお金などを渡せば良いですし、その意味では私立公立の差もなくすべきです。
一人ひとりの個性が大事になっている時代において、これからは学校もそれぞれに個性を持つことが重要になってきます。
「教育未来創造会議」のメンバーを見ましたが、個性的な学校を創り人材を育成できるのかと言うと、率直に言って全く期待できません。
この人たちには人材を育成してきた経験があるのでしょうか。
文科省の言うことを聞く人間をお金で支配するようなやり方は、絶対にやめるべきです。
私は20年以上前から、この構造に憤りを感じています。
DX人材の活用は、アウトソーシングと育成を使い分ける
昨今、特に「DX人材の不足」という問題を抱えていて、その育成を考えている企業も多いでしょうが、自社で育成することに執着せず、アウトソーシングと使い分けることが重要だと私は思います。
そのためにはDX人材のスキルによって分けて考えると良いでしょう。
すなわち、ITシステムなどを構築する際に必要なスキルと、その後システムをメンテナンスするスキルは違うものであり、それぞれの人材について分けて考えるということです。
世界を見渡せば、非常に高いスキルを持ったDX人材に仕事を依頼することができます。
例えば、コンサルタントなどに彼らと交渉してもらいます。
そして、ITシステム開発を世界中の極めて高いスキルを持った人材に一時的に手伝ってもらってシステムを構築します。
その後のメンテナンスは社内で抱えたDX人材で対応していくということも十分可能です。
全ての人材を社内で育てるというのは無理があり、特にシステム構築系の優れたスキルを持つDX人材は会社に所属してもなかなか上手くいかないこともあります。
文系で理屈ばかりの上司の下について、「ガラスの天井」にぶつかってしまうのです。
今の時代に合わせて、アウトソーシングと人材育成を上手に使い分けることが重要だと思います。
企業への賃上げ政策は、愚策中の愚策
日経新聞は先月28日、「賃上げ企業、入札で優遇」と題する記事を掲載しました。
2022年4月以降の政府調達の入札で賃上げを表明した企業を優遇する方針だと紹介。
先に決定した2022年度税制改正大綱にも賃上げ企業の控除率引き上げなど優遇税制が盛り込まれており、政府が企業の賃上げ実現に向けた対応を強化するとしています。
岸田首相とその取り巻きの人たちには呆れるばかりです。
企業が単に賃上げをしても、生産性を改善していなければ収益は悪化します。
こんな基本的なことすら理解していないから大手を振って賃上げを要求するのでしょうが、呆れて物が言えません。
さらには、賃上げ企業には入札で優遇するとのことですが、優遇措置のためのお金は誰のお金でしょうか。
もちろん税金でしょう。
国家の財政を使って賃上げさえすれば企業を優遇するということですから、とんでもない話です。
これは国家権力の濫用であり、こんなことが新聞に出ても誰も批判しないというのもおかしい事態だと思います。
デジタル時代に合わせて、法の精神を根本から見直すべき
日経新聞は先月30日、「法令4万件、AI検証 改正急ぐ」と題する記事を掲載しました。
岸田首相が書面や対面手続きの原則廃止へ向けて法令4万件を見直すと表明したのを受けて、政府がリーガルテック企業と連携し、改正すべき箇所をAIで抽出する作業に入ったと紹介。
現在は職員が条文をキーワードで検索して該当箇所を探すなどしていますが、AIの活用により作業の効率化を図るとのことです。
法令4万件の検証よりも、法律そのものを書き直す必要があると私は思います。
実際、私はマレーシアで、約25年前に法律を全て書き直すという作業をやったことがあります。
今回、AI検証の対象となった4万件は「文章を残す必要がある」「添付書類が必要」など特定の部分について電子的な対応でも可とするように改めるもので、要するに部分的な書き直しに過ぎません。
そうではなく、法の精神・考え方そのものをデジタルに合わせて組み直す必要があると私は思います。
そうすることで抜本的に解決される問題がたくさんあるはずです。
例えば、医師会はオンライン診療などに反対していますが、オンライン診療の診療報酬の方が高くなれば一気に風向きは変わると思います。
あるいは、CADシステムで入力したデータを元に建築可能かどうかを判断できるよう建築基準法を改正すれば、大半は電子的な作業のみで完結します。
今のように分厚い書類も不要ですし、審査も数秒で終わるはずです。
実際にこのようなことを実現している国もあります。
ところが日本では、構造計算書偽造問題となった姉歯事件後、さらに第三者による見直しが必要となり、納期が大きく遅れる事態を招きました。
21世紀になったのに石器時代に戻ってしまったレベルの話だと思います。
今のデジタルの時代に合わせて、ぜひ法の精神・考え方から根本的に見直すべきです。
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※この記事は1月9日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は人材育成のニュースを大前が解説しました。
大前はDX人材の育成について「全ての人材を自社で育成することにこだわらず、必要なDX人材のレベルによってアウトソーシングと上手に使い分けることが重要」と、述べています。
課題解決のためにアウトソーシングを活用することで、解決までのスピードや正確性が高まることが期待できるだけでなく、自社が本来取り組むべき課題に注力することができます。
まずは現状の課題を把握、分析したうえで、どの業務をアウトソーシングすべきかを検討しましょう。
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