大前研一「ニュースの視点」Blog

KON815「楽天/日本製鉄/日産自動車/日産・ルノー~ビジネスモデルが異なる楽天とアマゾン」

2020年2月10日 日本製鉄 日産・ルノー 日産自動車 楽天

本文の内容
  • 楽天 送料無料化の必要性強調
  • 日本製鉄 呉製鉄所の高炉2基休止へ
  • 日産自動車 追加リストラ策を検討
  • 日産・ルノー 日仏連合、曲折の新体制

楽天とアマゾンはそもそもビジネスモデルが異なる


楽天の三木谷浩史会長兼社長は先月29日、3,980円以上の購入者への送料を無料にすることについて、「楽天市場とテナントの皆様の成長のためには絶対に必要な施策。公正取引委員会が反対しようが、絶対に遂行する」と語りました。

送料無料の導入については出店テナントで構成される楽天ユニオンが反対を表明し、公正取引委員会が事情の聞き取りを開始しています。

この問題について、出店者と楽天が送料を相互負担する案などを考える人もいるかもしれませんが、そもそも本質的に問題を取り違えています。

この問題は、楽天とアマゾンのビジネスモデルの違いが引き起こしているものであり、まずそれを認識すべきです。

アマゾンは、自社で商品を購入して自社の倉庫に入れて出荷をしています。

2,000円以上の購入者に対して送料無料の設定をするのは、自社の範疇で判断できることです。

一方、楽天は単に場を貸しているだけに過ぎず、楽天自身が商品を仕入れているわけではありません。

もちろん倉庫に保管もしていないし、配送もしていません。

楽天への出店者が在庫を自ら抱えて、配送をしています。

ですから、出店者に送料を決める権利があるというのは、当たり前の話です。

このような前提を無視して、アマゾンが2,000円以上で送料無料なので、楽天は3,980円でも認められるだろう、という設定はあまりにもお粗末です。

もし、アマゾンと同じことをやりたいのであれば、楽天も出店者から商品を仕入れ、倉庫を用意し、自社の力で物流業務を抱えるべきでしょう。

反対を表明している出店者自身も、楽天の対応を押し付けられるのを嫌がっているだけでは知恵がないと思います。

このような本質的な違いを理解し、本当に楽天が嫌ならば、アマゾンに乗り換えるという選択肢もあるはずです。

この送料をめぐる問題は、両社のビジネスモデルの違いが顕著に現れた例であり、それを送料無料化だけで全て乗り越えようという三木谷会長の考え方には無理がある、と私は思います。




世界の製鉄市場の問題とは?


国内製鉄最大手・日本製鉄が、呉製鉄所にある2基の高炉を廃止する見通しが明らかになりました。

世界的な生産過剰で市況が悪化していることを受けたもので、鋼板の製造ラインも含め将来の全面閉鎖も検討するということです。

一貫生産の高炉の完全休止という例は、これまでに日本でもあまり経験がありません。

日本製鉄はその生産量を半分ほどに減らそうとしていると言われています。

このような事態を招いた背景には、世界の粗鋼生産における中国の影響力があります。

中国は年間約10億トンという世界トップの生産量を誇ります。

当然ながら、国内には多くの製鉄所を抱えています。

世界的に需要が減ってきているといっても、中国の場合には、政治問題が絡んでくるため、すぐに製鉄所や高炉を閉鎖することができません。

ゆえに世界全体のバランスから、他の国が調整せざるを得ないという状況になっています。

日本製鉄を含め、世界的な大企業が軒並み苦しい状況に立たされています。




ルノーの新CEOは日産の経営改善を許してくれるのか?


日産自動車が追加リストラ策として、新たに2工場の閉鎖と、米国・欧州を中心にした事務系社員4300人以上の人員削減を検討していることがわかりました。

また、不採算車種の廃止・統合を進める一方、新車の開発スピードを加速し、商品ラインナップの更新を短縮することなども検討する方針で、ゴーン前会長の拡大路線で低下した収益力の立て直しを図る考えです。

日産自動車の経営の立て直しにあたり、今後のルノーとの関係性がどのようになるのかという点が非常に重要になってくるでしょう。

日経新聞は先月29日、「日仏連合、曲折の新体制」と題する記事を掲載しました。

日産自動車の筆頭株主である仏ルノーの最高経営責任者(CEO)にルカ・デメオ氏が就任すると紹介。

デメオ氏はルノー、トヨタなどを経た後、独フォルクスワーゲン傘下のスペインのセアトを率い、数年で業績を回復させた人物で、昨年12月に新体制を発足させた日産とともに、日仏連合の首脳がようやく揃うとしています。

ルノーのCEOに就任予定のデメオ氏について、私は適任だと思います。

彼はルノーで働いた経験もありますし、代表を務めたセアトも以前は日産が出資していた会社なので、非常に馴染みが深い人物です。

セアトの経営を3年で立て直した手腕も申し分なく、業界の評判も悪くありません。

デメオ氏が上手に立ち回ってくれるのは良いのですが、私が懸念するのは、そこにルノー自身の問題が絡んでくると、面倒な事態を招くかもしれないということです。

具体的には、仏マクロン大統領との関係性です。

マクロン大統領は大きな野心を持って、かつてのナポレオンのようにフランス(の企業)で世界を席巻したいと考えています。

そんなマクロン大統領とデメオ氏はどのような付き合い方をするのか?

ルノーに対する日産の出資比率を見直すとき、どの程度デメオ氏が日産側に理解を示すかというのは1つの試金石になるでしょう。

日産からすれば、あと10%でもルノーの株式を獲得できれば、25%を有することになり、日産に対するルノーの議決権を排除することができます。

これが、まず日産が目指す第1ステップでしょう。

この話し合いにデメオ氏が応じてくれるのか否かというのは、大いに注目したいところです。

デメオ氏自身はイタリア人で現実派。

一方、マクロン大統領は世界の1000万台クラブにフランスの企業を仲間入りさせたいという夢を見る青年です。

この2人のギャップを埋められるのか、というのは非常に大きな問題だと思います。

現在、特に米国における日産の経営は不振に陥っていて、まずはここの立て直しに集中したいところですが、デメオ氏がそれを許してくれるのかどうか。

このあたりでも、デメオ氏のメンタリティーを判断することができると思います。

今、日産の株価は下落傾向です。

売上高はルノーを上回っていますが、利益をルノーに吸い取られている構図になっています。

フォルクスワーゲンとの契約の関係で、デメオ氏がルノーに着任するのは今年の7月以降になるとのことです。

ぜひ、日産に対して経営改善に集中できる環境を作ってもらいたいと思います。




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※この記事は2月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は楽天のニュースを大前が解説しました。

大前は「楽天とアマゾンのビジネスモデルの違いが、送料無料化の問題を引き起こしている」と述べています。

売上が好調な競合他社の施策をそのまま取り入れても、上手くいくとは限りません。

ビジネスモデルなど本質的な違いを理解したうえで

・自社の場合はどのように展開するか
・自社だからこそ出来ることは何か

を考えることが大切です。


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