2020年9月11日金曜日

体育が得意な子は人気者?

  「スクール・カースト」という言葉が流行ったことがあります。クラスの中の階級ってことですが,こういうのがあることは,誰もが経験知で悟っていることです。

 階級分けの尺度は,メンバーの中でどれほど人気を得ているか,決め事などの際,どれほど影響力を持ち得ているかです。カーストが上位の子が遊びに来ると,「**と仲良くしてね」などと,接待する親もいるといいます。わが子がいじめに遭わぬように,という思惑もあるでしょう。

 学級担任の教師にとっても,教室内のカースト構造は重要な関心事です。それを可視化する技法として,ソシオメトリック・テストなども開発されています。私は中3のとき,これをやった記憶がありますね。

 そう,「好きな子,嫌いな子の名前を挙げてください,その理由も書いてください」ってやつです。教師は得られた回答をもとに,学級内の人間関係図(ソシオグラム)を描きます。「スキ!」の矢印を多く集めている子はスターで,「キライ!」の矢印を多く向けられている子は排斥児です。私なんかは,まぎれもなく後者だったと思います。

 カーストの決定要因としては,ルックスの良さや腕っぷしの強さなどの他に,勉強の出来というのもあるでしょう。子どもの本分は勉強で,学歴社会の度合いが強いわが国では,勉強ができる子が賞賛の対象になりやすいからです。

 この点は,データで示すことができます。勉強の得意度と,友達の多さのクロスによってです。思春期の小学校6年生のクロス集計結果を示すと,以下のようになります。勉強の得意度で分けた4つの群ごとに,友人の多さを尋ねた結果を比較したグラフです。国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する調査』(2016年)の個票データを,独自に集計して出しました。

 双方の問いに有効回答をした2562人のデータで,タテの4つの群ともサンプル数は十分です。群ごとに友人の多さをみると,勉強が得意な群ほど,友人は多いという子が多くなっています。「とても思う」の回答比率(青色)は,勉強が最も得意な群では68.3%ですが,最も不得意な群では37.1%しかいません。攪乱のないきれいな傾向です。

 むろん例外もいて,勉強がとても得意なグループにも,友人が全くいないと自覚している子(赤色)もいます。私などは,まさにそうでした。

 まあ,一口に勉強といっても,いろいろな教科がありますからね。教科ごとに得意群と不得意群に分け,友人が多い子の割合を比べてみると,面白い傾向が出てきます。得意群は,得意な教科を尋ねた設問において,当該教科に丸を付けた児童で,不得意群はその他です。以下の表は,友人がとても多いと考えている児童の率(上図の青色)を,不得意群と得意群で比べたものです。


 どの教科でみても,友人が多い子の割合は,不得意群より得意群で高くなっています。座学では,社会科外国語において,両群の差が比較的大きいですね。博識で話が面白いからでしょうか。

 しかし,それ以上に差が明瞭なのは体育です。不得意群では38.6%ですが,得意群は60.3%で,21.7ポイントもの差が開いています。

 これは経験則に照らしても頷けます。運動ができる子はスターになりやすく,不得手な子は体育の授業で恥をかいたりすることが多いですしね。私自身,体育の授業には碌な思い出がありません。一人ずつ,皆の前で跳び箱を跳ばせるなどは,本当にやめてほしいと思いました。

 いわゆる「スクールカースト」の決定要因として,運動・スポーツの出来は大きいと。

 ですが,どの子どもも何らかの得意なものは持っています。それを掬い上げて褒めたたえるべきです。他者からの承認欲求は,思春期の年代ではとくに強くなります。教育の目的は調和のとれた人間形成ですが,バランスに囚われすぎると,不得意なことの矯正ばかりに目が行きがちになります。

 それよりも得意なことを認識させ,肯定的に自己を捉え,明るい将来展望を持たせたいもの。丹念な児童観察・理解をもとに,それを成し遂げるのは,専門職としての教師の役割です。