松田智生『明るい逆参勤交代が日本を変える』

 三菱総研の松田智生先生から、ご著書『明るい逆参勤交代が日本を変えるー働き方改革と地方創生の同時実現』を頂戴しました。ありがとうございます。

 「逆参勤交代」というのは要するに都心勤務者がそれなりの期間地方でリモートワークするというもので、都心の生活とはまったく異なる環境や人間関係などの中に身を置くことによって様々な気づきを得たり、新たな価値観に目覚めたりすることを目指す、ということでしょうか。昨今リモートワークは大流行であり、ワーケーション(本書でも一種のワーケーションとされています)も注目される中、タイムリーな発想といえましょう。もっとも、なんの仕掛けもなければわざわざ好んでそれをやる人というのもいないだろうというわけで、企業が費用を負担して研修の一環として実施することが想定されています。第2章では各方面の識者関係者の期待、第3章では実際に実施してみての成功例が紹介されていてわかりやすい構成となっています。第4章は提言です。
 とはいえ、いかに「程よい」とは言っても強制力がなければ普及しないだろうこともまあ明らかなように思われ(強制力がなくてもやる人はすでにやっているだろうと思うわけで)、まあそこに限界はあるだろうなと。地方暮らしもいいことばかりではありませんし好まない人もいるだろうところ、企業に行けと言われて行くにしても、それがなにかキャリア面で有利になるのではないかとの期待がなければモチベーションも上がらないだろうと、まあそう思うわけです。でまあ企業が期待の人材を逆参勤交代させて終了後は一段階昇進とかいうことはあまり考えにくいわけで(実際事例でもこれが昇進につながったという話はない)、むしろ提言の中にもあるように企業としてはセカンドキャリアにつなげたい、要するにこれを機に出て行ってくれるならカネをつけてもいいよという話なので、キャリア上の不利益を心配する人のほうが多いのではないでしょうか。
 そもそも江戸時代の参勤交代にしても、お殿様は地元より江戸のほうが居心地がよくて地元は家老に任せて江戸屋敷に居ついてしまい、殿様のいない参勤交代が往復していたという話もあるくらいなので、逆参勤交代と言われてもなかなか普及は難しいだろうなという感はあります。いや私は会社がカネを付けてくれるなら喜んで2週間くらいワーケーションをするだろうとは思いますが、それは私がもうキャリアに野心のない人だからそうなるわけです。