大前研一「ニュースの視点」Blog

KON823「新型コロナ/遠隔治療/ドイツ/アメリカ~世界的に見た新型コロナの感染者数・死亡者数の実態」

2020年4月6日 アメリカ ドイツ 新型コロナ 遠隔治療

本文の内容
  • 遠隔治療 オンライン診療の保険適用基準を緩和
  • ドイツ 際立つ低死亡率
  • アメリカ 感染者数が中国、イタリア上回り

感染者数・死亡者数を抑え込めている日本とドイツの方法


厚生労働省は先月23日、新型コロナウイルスの患者が爆発的に増加した場合、自宅療養する軽症者に対し、ビデオ通話によるオンライン診療を保険で特例的に認めると発表しました。

これまでやりそうでやらなかったオンライン診療を検討しているとのことですが、現時点では日本は他国に比べて感染者数・死亡者数を抑えることに成功しています。

クルーズ船の感染者の対応に追われた厚労省は、発熱があってもそれだけで病院受付をせずに、事前の電話確認を促しました。

「37.5度以上の熱が4日以上続いている」「基礎疾患がある」「外国から戻ってきたばかり」など、特定の条件を満たした人だけが病院に来て診察を受けられる、としたのは結果としては吉と出ました。

これらの日本の対策が良かった、と海外のメディアでは好評を得ています。

一方、日本とは異なったやり方で抑え込みに比較的成功していると言えるのがドイツです。

日経新聞は先月29日、「ドイツ、際立つ低死亡率」と題する記事を掲載しました。

新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、欧州の主要国で死亡率に大きな差が出ており、特にドイツは0.7%と突出して低いと紹介。

早期検査で重症化しやすい高齢者の感染者増が抑えられている面があるとしています。

ドイツは、初期の段階で大量の検査を行い、症状の重さに応じて診療方針を決めて、一気に患者を振り分けるという方法をとりました。

そして、人工呼吸器を大量に保有していたのも良かったのでしょう。

結果として、高齢者の重症化を抑えることに成功し、非常に死亡者数が少なくなっています。

今では、国内に比較的余裕があるので他国から患者を受け入れる姿勢すら見せています。

入り口を絞った日本に対し、入り口を広げ一気に検査をしたドイツ。

方法は異なりますが、今のところ、日本とドイツが感染拡大や致死率の上昇を抑え込むことができていると言えるでしょう。




世界的に見た新型コロナの感染者数・死亡者数の実態


新型コロナウイルスの米国の感染者数は先月29日時点で12万4464人となり、これまで最多だった中国とイタリアを上回ったことがわかりました。

「全てはコントロール下にある」と豪語していたトランプ大統領は、もはや見る影もありません。

死亡者数の増加を受けて、トランプ大統領は国防生産法に基づき、ゼネラル・モーターズに人工呼吸器の製造を命じました。

国防生産法は、朝鮮戦争中の1950年に制定されたもので、大統領の権限で民間企業に医療品の増産を指示できる法律です。

やや暴走気味のトランプ大統領は、「ニューヨーク州などを事実上封鎖する措置を検討している」と発言し、ニューヨーク州・クオモ知事から大きな反発を受けて対立する一面もありました。

感染者数で見ると、イタリアを抜きトップに躍り出た米国ですが、人口100万人あたりの感染者数で見ると、実はそれほど高くありません。

サンマリノ、バチカン、アンドラ、フェロー諸島など、人口が少ない地域のほうが感染者の割合が著しく高いことがわかります。

日本は世界的に最下位に近いところに位置していて、100万人あたりの感染者数は11.9人となっています。

同様に人口100万人あたりの死亡者数を見ると、イタリアの151人、スペインの103人が突出して高いことがわかります。

英国も11人とやや多く、米国は比較的少なくなっています。

ちなみに日本は、0.4人でかなり少ない状況です。

概数として、世界的な感染者数が66万人に対し、死亡者数が3万人、回復した人が14万人と言われています。

つまり、いまだに50万人が治療中でベッドを占有している状態にあり、これが問題だと私は思います。

発症してから回復するまでに時間がかかるということなので、かなり始末が悪いウイルスです。

またTIME誌の記事によると、致死率の世界的平均値は約4%です。

上でも述べたように、イタリアは致死率も高く、約8%で平均値の2倍になっています。

年齢別の致死率では、イタリア、中国、韓国など、いずれの国においても年齢とともに増加しています。

特に、80歳を超えると致死率は19%に達します。

また記事内では、こうした状況に鑑みたとき、医療システムの限界を超えないように感染者数のピークを抑えていくことが重要だとしています。

現在のところ、イタリア、スペイン、イラン、ドイツ、英国、フランス、米国、いずれの国もそれを実現できておらず、感染者数はオーバーシュートのカーブを描いています。

韓国だけは、一度オーバーシュートのカーブに入ったものの、その後落ち着いた様子を見せています。




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※この記事は3月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は世界の新型コロナウイルスの感染者数・死亡者数について大前が解説しました。

大前は「人口100万人あたりの感染者数・死亡者数」をもとに現在の状況を分析しています。

いくらデータがあっても使い方次第では無駄になってしまうこともあります。

膨大な量のデータが手に入る今の時代、「何と何を比較し、いかに分析するか」が問題解決のカギを握っています。


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