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『現金給付10万円から解る貨幣の真実』(後編-1)』三橋貴明 AJER2020.6.2

    

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自民党の消滅 日本で語られたことがない権利・権力・国家・政治の話[三橋TV254回]
 
 今更ですが、MMT(現代貨幣理論)とは、単なる現代の貨幣の説明です。

 貨幣とは、特定のモノではなく、債務と債権の記録。すなわち、貸借関係である。

 この、MMTの「根幹」については、誰にも否定できません。すなわち、
「銀行は、顧客の借用証書と引き換えに、自らの負債となる銀行預金という貨幣を発行している」
「日本銀行は、銀行(等)が持ち込む借用証書(国債、政府小切手等)と引き換えに、日銀当座預金という貨幣を発行している」
「日本銀行は、自らの借用証書である日銀当座預金と引き換えに、現金紙幣という貨幣を発行している」
 といった事実は、地球上で生きている限り、否定不可能なのです。

 問題は、ここから。

 MMTの貨幣に関する説明が正しい以上、例えば財政において、
「変動為替相場制の国は、インフレ率が許す限り、政府は国債発行、中央銀行の国債買取と貨幣発行が「無限」に可能であり、財政的な制約がない」
 という、政治的な「条件」が成立することになります(成立します)。

 要するに、MMTの貨幣の説明から、「政治」の条件が決まるのです。というわけで、わたくしはMMTに基づく政治を「MMTポリティクス」と名付け、切り分けを明確にしようとしました。
 
 つまりは、
「日本はMMTをしていない」
 等々の主張をする者は、究極的なバカ頭が弱い人で、事の本質を理解していません。「MMTをする」、とは「万有引力の法則をする」と言っているのと同じです。

 問題は「MMTポリティクス」すなわち、MMTの政治への応用なのです。
 MMTの経済学者たちが、例えばJGPなど、明らかに「政策」に踏み込んだ提言を書いてしまっているため、混乱に拍車がかかっているような気がします。本来、MMTという「現代の貨幣の説明」と、MMTに基づく「政策」は分けるべきだと思うのです。

 ところで、日本がMMTの正しさを証明した、というのは事実で、何しろ、政府の貨幣(国債)を発行しても発行しても、インフレ率は上がらない。国債金利も上がらない。

 当たり前です。デフレで「インフレ率が低い」ことに困っている国の政府が、国債や国債買取を拡大したところで、需要が供給能力に追い付かない限り、インフレになるわけがない。変動為替相場制の日本は、インフレ率が低い状況が続く限り、政府は「無限」に国債を発行し、日銀が買い取ったところで「何の問題もない」のです。

 ならば、日本が「MMTポリティクス」を実践していたかといえば、もちろんそんなことはありません。何しろ、世界で最も、
「国の借金で破綻する~っ!!!!」
 の虚偽レトリックが蔓延してしまっている国なのです。日本政府が「MMTポリティクス」に基づき、総需要の不足を埋める貨幣発行をしていれば、我が国はとっくにデフレから脱却しています。

 現実は、MMTとMMTポリティクスを切り分けず、
「MMTは嘘だ~」
 といった、MMT否定論が蔓延っていますが、彼らは事の本質を理解していないので、盛大に嘲笑し、攻撃しましょう
 

【三橋貴明の音声歴史コンテンツ 経世史論】

http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
評論家・中野剛志世先生の「通貨論争史 イギリス編」がご視聴頂けます。

 

 我々以外にも、もちろん事の本質を理解している人はいます。
 
失われた30年からの脱却にMMTは有効だ=ポール・シェアード(ハーバード大学ケネディスクール上席研究員)【週刊エコノミストOnline】

 米国や日本で毎年巨額の財政赤字を垂れ流し、日銀が異次元の金融緩和で、事実上の財政ファイナンスをしている状態から、日本は「現代貨幣理論(MMT)」を実践していると指摘される。しかし、私は違うと言いたい。

 MMTの基本的洞察は貨幣の創出者たる統合政府には、資金調達の制約がない。金財分離の制度的枠組みが、そういう制約を恣意(しい)的に作り上げているだけだ。本来、政府には資金の枯渇があり得ない。真の制約は、実体経済の在り方にある。
 確かに2013年に黒田東彦総裁率いる日銀が大掛かりな量的緩和に踏み切ったのは、MMTをほうふつとさせた。なぜならば、量的緩和は統合政府が返済期限のある国債を返済期限のない中央銀行の負債に変形させるからだ。金融政策と財政政策の境目を溶かす策だ。
 日本の長期停滞の教訓は、金融緩和と財政出動の一体政策を欠いたことだったと私は考えている。ゼロ金利や量的緩和政策を実施し、財政出動を実施したかと思えば、00年にゼロ金利を解除したり、小泉政権では公共投資の削減に踏み切るなど緊縮財政に取り組んだ。
 また、量的・質的金融緩和のスタートからたった1年(14年4月)で、政府が消費税率を5%から8%への引き上げに踏み切った。まさにアクセルを踏みながら、ブレーキを同時にかけるようなちぐはぐな政策を続けてしまった。
 対照的なのは米国だ。08年のリーマン・ショック後、米国は日本の失敗の教訓を生かし、金融緩和と銀行資本投入も含む財政出動で景気の底割れを回避し、いち早く回復基調を取り戻した。
 翻って日本は、また過去の失敗を繰り返そうとしている。2%の消費者物価指数(CPI)上昇率の実現が見通せないまま、10月には財政再建への配慮から消費増税を実施しようとしてる。日銀の黒田総裁も予定通りの消費増税実施を支持している。こういうことでは、金融と財政が一体となり、財政制限を取っ払うMMTとは程遠い。(後略)』
 
 ポール・シェアード氏の記事をきちんと読むと、MMTとMMTポリティクスを分けた上で、
「日本はMMTを実践していない」
 と、書いています。

 その通り。
 
 日本はまさに、
「金融緩和と財政出動の一体政策を欠いた」
 結果として、日銀がMBを380兆円も拡大したにも関わらず、インフレ率は上がらない。日本が本気でMMTポリティクスを実践したならば、PB黒字化目標などという頭のおかしい基準は、とっくに撤廃していなければならないのです。

 日本政府が二度の補正予算で、2020年度のPB赤字が70兆円近くに達し、さらに拡大することになるでしょう(しなければなりません)。となると、例により「国の借金で破綻する!」といった財政破綻論というか、MMTという正しい貨幣の説明を無視したおバカ理論が増えてくることになるでしょう

 というわけで、一度、話を整理しておきたかったのです。MMTとMMTポリティクスは違います。
 日本は、MMTの正しさを証明しましたが、MMTポリティクスは実践していないのです。
 
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