統合政府(政府+日銀)のバランスシートで問題なのは、資産と負債の差額「△534兆円」である。これは債務超過なので、今後のプライマリーバランス黒字の累計が534兆円以上ないと返せない。これは明らかに不可能だが、それが財政破綻の証拠なら、今ごろハイパーインフレになっているだろう。
普通の企業では、返す見込みのない借金を背負った企業の社債には、高い金利(リスクプレミアム)がつく。たとえば楽天グループが発行するドル建て社債の金利は12%だが、国債の金利はほぼゼロである。政府債務を完済する必要はなく、借り換えで将来世代に先送りできるからだ。
しかし世界的に金利が上がり、日銀もゼロ金利からの出口を考える時期になってきた。ここで問題は、国債を日銀当座預金に置き換えて統合政府の債務が短期化し、金利リスクが大きくなったことだ。
これを避ける一つの方法は、岩村充氏の提案のように日銀の保有国債を永久国債で借り換えることだ。いま話題の「防衛国債」も、永久債にしてはどうだろうか。
日銀の買う国債は無利子でいい(金利は国庫納付金で返すだけ)。民間については、岩村氏は停止条件つき変動金利永久国債というしくみを提案している。非常時の場合、たとえば台湾有事で一挙に数十兆円の支出が必要になったときは、金利や物価が急上昇することも考えられるが、日銀が国債を全額買えればいい。
問題は債券市場が、借り替えで政府の返済能力に疑問を抱くことだ。鈴木財務相は国民民主党の質問に対して「永久債化で財政・金融政策の独立性に対する信認が損なわれ、日本国債の金利が急騰する恐れがある」と答弁したが、徐々にやってみればわかる。おそらく何も起こらないだろう。日本政府の返済能力への信頼はきわめて強いからだ。
最大の問題は、無駄な政府支出が増えることだ。財政健全化という錦の御旗がなくなると、財政支出の効率が低下する。これを防ぐには、政府支出の社会的収益率が長期金利を上回るかどうかをチェックする必要がある。ターナーのいうように日銀政策委員会が財務管理するなどの制度設計が考えられる。
僕は決して緊縮財政派ではないが、本件については高橋洋一氏が完全に誤り。藤巻氏が正しい。添付は先日の当方の講演資料。日銀を連結しても債務超過だ。むりやり「徴税権」を計上したり「日銀当預が資本」と言ったりして企業会計の原則から逸脱するなら、そもそもBSで財政状態を分析する意味がない。 https://t.co/DOxLZolfMZ pic.twitter.com/sbqPG1w7J2
— 前田順一郎(公認会計士) (@maejun_jp) November 25, 2022
普通の企業では、返す見込みのない借金を背負った企業の社債には、高い金利(リスクプレミアム)がつく。たとえば楽天グループが発行するドル建て社債の金利は12%だが、国債の金利はほぼゼロである。政府債務を完済する必要はなく、借り換えで将来世代に先送りできるからだ。
しかし世界的に金利が上がり、日銀もゼロ金利からの出口を考える時期になってきた。ここで問題は、国債を日銀当座預金に置き換えて統合政府の債務が短期化し、金利リスクが大きくなったことだ。
これを避ける一つの方法は、岩村充氏の提案のように日銀の保有国債を永久国債で借り換えることだ。いま話題の「防衛国債」も、永久債にしてはどうだろうか。
本質的な問題は財政支出の社会的収益率
永久国債はそれほどおかしなものではなく、大英帝国は18世紀から発行している。これを日銀が買い取れば、有利子負債を統合政府のBSから消すことができる。日銀の買う国債は無利子でいい(金利は国庫納付金で返すだけ)。民間については、岩村氏は停止条件つき変動金利永久国債というしくみを提案している。非常時の場合、たとえば台湾有事で一挙に数十兆円の支出が必要になったときは、金利や物価が急上昇することも考えられるが、日銀が国債を全額買えればいい。
問題は債券市場が、借り替えで政府の返済能力に疑問を抱くことだ。鈴木財務相は国民民主党の質問に対して「永久債化で財政・金融政策の独立性に対する信認が損なわれ、日本国債の金利が急騰する恐れがある」と答弁したが、徐々にやってみればわかる。おそらく何も起こらないだろう。日本政府の返済能力への信頼はきわめて強いからだ。
最大の問題は、無駄な政府支出が増えることだ。財政健全化という錦の御旗がなくなると、財政支出の効率が低下する。これを防ぐには、政府支出の社会的収益率が長期金利を上回るかどうかをチェックする必要がある。ターナーのいうように日銀政策委員会が財務管理するなどの制度設計が考えられる。