だいずせんせいの持続性学入門

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パンデミック日記2020年8月24日

2020-08-25 14:12:19 | Weblog

 日本では今年の3月頃から始まった第1波の感染拡大では全国に非常事態宣言が出され、経済活動はストップ、学校も全面休校と大きな影響があった。それが5月末にはほぼ収まったあと、7月から第2波が始まった。私が指標としてモニターしている東京での重症者数が上昇し始めたものの、現時点ではそれほど増えることなく収束に向かいつつある。国の非常事態宣言は出されていないが、愛知県と岐阜県は独自の非常事態宣言を出している。そのおかげで大学の警戒レベルは第1波の全国非常事態宣言当時と同じレベルになっている。授業は原則オンラインで、10人以上が集まる会議もオンラインである。今日は大学院の入試があったが、前代未聞のオンライン口述試験であった。私が子どもの頃、「夢の21世紀」の象徴はテレビ電話であった。それが本当に実現したとは感慨深いものがある。パンデミックのおかげで一気に「未来」がやってきた感がある。

 新型コロナウイルスCOVID-19感染症についてはわからないことだらけながら、第1波の経験でいくつか明確にわかったこともある。

 まずは死亡率が年齢によって大きく異なること。40歳代までの死亡率は非常に低い(20代まではゼロ、40代で死亡率0.4%)。50代から上昇しはじめ、80歳以上で30%ほどになる。その中でも生活習慣病などすでに何らかの病気を持っている人の死亡率が高い。80歳以上の死亡率30%というのは決して小さい数字ではない。つまり、この病気は若い世代にとっては命にかかわるものではなく、一方で病気ですでに弱っている高齢者を死なせる病気だということだ。

 第2に、死亡しなかった人は、有効なワクチンも薬もない状態で、感染しても発病しないか発病しても回復している。これは人間の体に備わっている自然治癒力、正確には自然免疫の力である。その力を見せつけられている形だ。

 第3に満員電車では感染が拡大しないということ。飛沫感染なので密集状態でも皆が黙っていれば感染は広がらないということらしい。一方、飲み会、カラオケ、「接待を伴う飲食」などが典型的な感染拡大のパターンだ。ということは、娯楽の部分を気をつけさえすれば、感染拡大は防げるということだ。

 第4は深刻な後遺症があるということ。若い人が軽症で回復した場合でも、倦怠感や頭痛、食味がないなどの後遺症が長く続き、社会復帰が困難な人が相当数いるようだ。決して単なる風邪とは言えない、深刻な病気である。

 以上の知見からすれば、今後の対策をどうすれば良いかも自ずからみちびきだせる。通常の経済活動や学校などは平常どおり行って良いだろう。ただし話すときにマスクをつけることと、部屋の換気をよくすること、手洗いを徹底すること。これでほぼ大丈夫なのではないか。ソーシャルディスタンスという言葉が流行り言葉のようになったが、満員電車で感染拡大しないところを見ると、それほど神経質になる必要はないのではないかと思う。飲み会、カラオケ、「接待を伴う飲食」は、感染拡大しない方法を検証する必要があり、その方法が確立するまでしばらく我慢する必要があるだろう。

 一方で、特に気をつけるべきは、高齢者が集まっている病院や介護施設での集団感染を防ぐことだ。これはすでに相当なレベルで取り組まれているものと思う。

 4、5月の国の緊急事態宣言以降、経済活動に大きな影響が出ている。仮にこのまま収束したとしても2020年のGDPは数十%の減少となるだろう。飲食、旅行などの分野では需要が「蒸発した」と表現される。買い物の出足も激減したので、お店で買うようなものは軒並み需要が大幅に落ち込んだ。例えば自動車のようなものも売れ行きが落ち込み、それが波及して製造業でも仕事が減っている。もっとも中国経済の回復が速く、トヨタ自動車などは経営への悪影響は限定的になっているようだ。

 国内では、派遣切りや雇い止めなど、非正規雇用で働いている人が真っ先に影響を受けている。外国労働者やシングルマザーなど非正規雇用で生計を立てている人たちが深刻な状態になっていると思われる。

 第1波が終わって社会は通常モードに近づきつつあったが、その矢先の第2波到来で、買い物や飲食、観光の人出は回復していない。飛行機、鉄道、バス、タクシーなどの交通機関の経営は非常に厳しい状態になっている。観光は数年前から外国人観光客ブームだったので、一気にその客足が途絶えてしまった。パンデミックが収束すればまた元どおりのブームになると思うが、いつ回復するか今の所めどが立たない。

 意外だったのが医療機関の経営が厳しくなっていることだ。COVID-19感染者を受け入れる病院では他の患者の診療ができなくなる。またその他の病院でも院内感染を心配して人々が医者にかからなくなり、診療が減って病院としては大きな収入減になっている。医療機関には申し訳ないが、これで良いのなら過剰な医療が少なくなり、社会全体の医療費が減って良いのではないかと思う。「病院に行くと病気をもらうかもしれない」という感覚は、COVID-19の登場以前から、薬剤耐性菌の世界的な蔓延によって必要とされていたものだ。

 オンラインビジネスが急成長している。UberEatsなどは日本社会から一旦ほぼ消滅していた「出前」を大々的に復活させた。パンデミックは実店舗での商売からEC(電子商取引き)へという流れを加速させたと言えるだろう。

 テレワークが急速に普及したのもこのパンデミックがもたらした社会の大変化の一つだ。私も第2波が始まって再び原則テレワークとなった。夏休みに入るまで授業はほとんどオンラインで行った。おもしろいのは、これまであまり意味が感じられなかったような会議がずいぶん減ったことである。不要不急の会議はやらない、メール審議で済ませる、どうしてもということならオンラインで、ということになっている。オンラインでやる会議は対面と比べるとやはりかなりやりにくい。それで会議漬けのやり方が緩和されていると言えるだろう。

 また、テレワークなら都市から離れているところに住んでいても仕事ができる。週2、3日なら遠距離通勤でも大丈夫、という感覚が広がっている。私はパンデミックが始まる前から田舎で暮らしているが、テレワークが制度化されたおかげで通勤の負担がかなり軽減され、その分集中して時間をとることができるようになった。Zoomは田舎のネット環境でも安定して作動してくれる。ただ、一度だけZoomで授業をしていた時に停電になり、授業を中断せざるを得なかった。それで自宅に無停電電源装置を導入した。これでよほど大丈夫だと思う。

 感染拡大が収束したとしても、もう「beforeコロナ」の時代には戻れない。私たちは社会変革の思わぬ「実習」を経験することになっている。もっともその変化は従来から進んでいたものを加速化させたということだ。その変化の向かうところはどこなのか。持続可能な社会に向かっているのか。しばらくモニターしていきたい。

 

 

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