大前研一「ニュースの視点」Blog

KON887「メッセンジャーRNA/国内ワクチン接種~今後の新型コロナとの付き合い方とは」

2021年7月5日 メッセンジャーRNA 国内ワクチン接種

本文の内容
  • メッセンジャーRNA mRNA、次世代薬けん引
  • 国内ワクチン接種 全国の18歳以上の接種開始

メッセンジャーRNAで飛躍した独ビオンテック社


日経新聞は先月15日、「mRNA、次世代薬けん引」と題する記事を掲載しました。

新型コロナワクチンで初めて実用化されたメッセンジャーRNA医薬が注目を集めていると紹介。

遺伝情報の伝令役であるメッセンジャーRNAは人工合成でき、病気に合わせた創薬が容易なことが特徴で、癌やHIVなどを対象にした新薬の治験が進み、早期開発への期待が高まっているとのことです。

mRNAへの期待が高まる中、独ビオンテック社が注目を集めています。

米ファイザー社のワクチンは、独ビオンテック社との共同開発ということですが、実際に主導したのはビオンテック社とも言われています。

ビオンテック社の創業者はトルコ出身の方です。

そして、特に今回のワクチン開発に大きく寄与したと言われているのがハンガリー出身のカタリン・カリコ氏です。

カリコ氏は、テンプル大学やペンシルベニア大学でRNAの研究をしていましたが、あまり評価を得ることができなかったそうです。

ペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン教授と今回のワクチン開発に結びつく研究成果を共同発表しましたが、それでも注目を集めることはありませんでした。

それがビオンテック社に招かれて、一気に花が開き、今は上級副社長を務めるほどになっています。

ビオンテックは創業者がトルコ出身で、カリコ氏はハンガリー出身ですから、どちらも移民です。

ドイツにはそういう人たちが活躍できる土壌があるということだと思います。

優秀な人材は、移民であろうがなかろうが関係ないという環境は非常に重要です。

残念ながら、日本ではスポーツの分野を除いてこのような例をほとんど見たことがありません。

これからは日本でも、移民を受け入れて活躍できる環境を整えることが大事だと思います。




国内ワクチン接種で混乱を引き起こした河野氏


自衛隊が運営する新型コロナワクチン大規模接種センターは先月17日、これまでの65歳以上から範囲を拡大し、全国の18歳以上を対象にした接種を開始しました。

一方、河野行革相は23日、企業や自治体が実施する職域接種や大規模接種について、申込みが上限に達したとして申請の受付を一時停止すると発表しました。

河野氏には気の毒ですが、全く実態が掴めていないと感じます。

大規模接種には余裕があるとして、年齢制限を外して間口を広げたものの、自治体によってはまだ配布していない接種券を必須にしたことで、明らかに混乱が生じました。

挙げ句、職域接種については、米モデルナ製ワクチンが不足する可能性があるとして、企業などからの申請の受付を一時休止するとは意味がわかりません。

米モデルナ製ワクチンを職域接種へ3300万回分割り当てるとのことですが、このような上限数を示したのも初めてです。

河野氏と言えば、緻密な仕事ぶりが売りだったのに、一体どうしてしまったのかと思います。

今回のワクチン接種については、明らかな問題が起こっていて、国民の中には怒りを感じている人もいるでしょう。




新型コロナもインフルエンザ化する可能性が高い


今後の新型コロナとの付き合い方を考えると、インフルエンザと同様になっていく可能性が高いと感じます。

今、イスラエルでデルタ株が蔓延し、イギリスはデルタ株が猛威を奮って再び感染者が急増しています。

このデルタ株のように、新型コロナもインフルエンザと同様に、毎年異なるものが蔓延し、それに対応するようになるかもしれません。

ワクチンで言えば、毎年異なるインフルエンザのワクチンを生産しているように、新型コロナワクチンも毎年の「型」に合わせて生産することになるでしょう。

ただし、現時点ではデルタ株にはワクチンの効果が期待できないとも言われていますから、経過をよく見ていく必要はあると思います。

あるいは、可能性は低いと思いますが、新型コロナが衰退して、そのような心配をする必要がなくなってくれるかもしれません。




これからは五輪開催に手を挙げる国・都市は減っていく


こうした状況の中、日本が五輪開催に踏み切ったことに関して、多くの国民が不満や不安を感じていると思います。

しかし、残念ながら日本側には五輪開催に関して意思決定に関与できる仕組みがないということが今回の件を通じてはっきりとわかりました。

さすがに日本の首相が開催禁止を東京都に命じれば話は別ですが、逆に言えばそこまでの強権を発動しない限り、五輪の開催を中止することはできません。

基本的に、開催の可否について全ての鍵を握っているのは米国のNBCです。

新型コロナも日本の状況も関係なく、アスリートが競技をやってしまえば、スポンサーも文句は言わないし何も問題はない、というのが米NBC会長の見解です。

この意見を聞いた時には、あまりの「下品さ」に私は呆れました。

そんな米NBC会長に対して、IOC(国際オリンピック委員会)もはっきりと意見は言えない立場です。

次の北京五輪について言えば、参加国がボイコットして、結果としてスポンサーが降りるとなれば、NBCも開催を見送らざるを得ないと思いますが、そうでない限り、NBCは今回同様に強く開催を求めるでしょう。

おかしいと感じる部分は多いと思いますが、五輪というのは「そういう組織」なのだと認識するしかありません。

それゆえ、今後は五輪開催に手を挙げる国・都市もどんどん少なくなるのではないかと私は見ています。




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※この記事は6月27日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


大前は「職域接種にあたり企業へ準備を依頼したにもかかわらず、ワクチンの供給が追い付かず受付停止するというのは大きな問題」と述べています。

プロジェクトを期日までに完了させるためには、将来に関する予測が必要となります。

その際、楽観的な予測だけでなく、悲観的な予測もしておくことで、柔軟な対応が可能になります。


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