カラフルファミリー 感想

NHKのドキュメンタリー「カラフルファミリー」という番組がとてもおもしろかった(考えさせられた)ので、忘れないうちに感想を書いておきます。

番組概要は下記にありますが、
www6.nhk.or.jp

トランスジェンダーの(女性の体で生まれたけど男性だった。ので、今は男性として生活している)文野(ふみの)さんと、彼のパートナーである女性が子供を持ちたいと考え、

いろんな方法を熟慮検討した結果、

文野さんの 10年来の親友でもあり、ゲイでもある男性の権ちゃん(ごんちゃん)から精子提供を受けて、文野さんのパートナー女性が妊娠、出産。

関わり方の濃淡はあるけど3人で子育てを始めている、という実話の取材番組でした。

以下、視聴した感想をまとめておくと

少子化が問題だと言うなら、子供を産みたい人が産めるよう環境整備したらいいのに

今回の番組で取り上げられた人たちは、結果として「ゲイだけど」「トランスジェンダーなのに」子供をもてている。

けど、

子供はももちたいけど、法的な制限、社会制度的な制限、周囲の偏見や好奇の視線など様々な障害を考えると実現できない(もしくは踏み切れない)という LGBT の人たちはめっちゃ多いはず。

番組内では、LGBTのカップルで子供をもちたいと思ってる人が増えていること、実際にトライする人たちも増えていることが紹介されてました。

それなら!

もうちょっと環境を整えたほうがいーんじゃないの?

前にも私は「夫は要らないけど子供は持ちたいという女性も、結構な数いるはず」というブログを書きました。
chikirin.hatenablog.com

こういう女性も今の環境だと、「子供をもちたいのにもてない」ままになっている。

・戸籍上の男性と女性が
・法的に結婚という手続きを踏まない限り
・子供をもつという行為を(国としても社会としても)支援しない

から少子化が進むんですよ。

そうでなく、「子供が欲しい」と思う人は全員、余計な苦労をせずに子供がもてるように環境整備をすべきでしょう。

と、思いました。

当事者の説明能力がめっちゃ高い

今回の番組で取材されてた 3名、みんな「言語による説明能力がめちゃくちゃ高い」んですよ。

これには驚きました。

自分の性的指向とどう向き合ってきたか、そこから生じた様々な問題や葛藤をどう受け止め、解決してきたか、や

3人で子供をもち、誰がパパなのか俺はパパなのか、といった極めて繊細な感情についても、3名とも言葉にしてキチンと説明できてる。


これ、当事者がみな言語化が得意な人だった「から」、こういうことが実現したのだ、とも言えそう。

言語化が上手くないと、親や病院や弁護士などを含め、自分たちのやろうとしてるコトを理解してもらったり、それに伴う複雑な問題を解決することができない。

だから、「当事者の言語化能力がすごく高かったから、こういうことが実現した」

という可能性。


が、あたしは反対だったんじゃないかと思ってる。

それは、「様々な問題を解決するため、みんなものすごく深く考え、話し合ってきた。そのプロセスを通して、3人の言語化能力が驚くほど高められた」って方向。

こういう「今の社会では極めて少数派とされる生き方」をしようと思うと、自分とも、身近な人とも、社会とも、めちゃくちゃ根気よくコミュニケーションし、理解してもらわないと生活が成り立たない。

だから彼らは幼い頃から
・自分自身や
・カミングアウトに戸惑う親や
・友人や仕事上の関係者や
・役所の人や医療機関の人や
・そしてパートナーや周りの人と

常に濃密な話し合いを続けてきたんじゃないでしょうか。

そしてその結果、ここまでの言語化能力を身につけたのかなって思いました。

「社会の大半とは違う生き方」をしようとする気持ちがさきで、その目標を実現するための過程でここまでの高い言語化能力を身につけてきた、という方向。

まっ、実際どっちなのかはわかりませんが、とにかく「みんな説明能力が半端なく高いなー!」と驚きました。

「普通の家庭」みたいな概念と、全員をそこに向かわせる社会プレッシャーは百害あって一利なし

東京に住んで外資系で長く働いたりすると、LGBT の人は珍しくないし、そこまで偏見が残ってる感じはしない。

けど、当事者にとってカミングアウトはまだまだとても大変なこと。

なぜなら、
・もっとも身近な家族である親の世代は、「適齢期の男性と女性が法的に結婚届を出して築く家庭が普通の家庭」とふつーに考えてる。

・自分の性的指向に最初に気づくのは(おそらく)思春期で、その頃(中学校くらい?)は学校が所属コミュニティなんだけど、この「学校」ってのが極めて保守的な思想しかもってない。

もし、どの中学校にも男性同士で結婚してる先生がいて、「ボクの担任の先生は男性だけど、同じ男性の人と結婚してるんだよ」とか「算数の先生は今は男性として生きてるけど、生まれた時は女の子だったんだって」みたいな状況にならないと、

中学生の子供が自分の性的指向を不安に思わず、周りに自然に話せるようにはなかなかならないよね。

んが、

日本の学校がそうなるには、あと数十年はかかりそうにさえ思える。


もし
・恋愛とか結婚とか性交は、男性と女性がするものである
・人はできればみんな結婚すべきである
・結婚しないで子供を持つのは無責任である

といった社会的な洗脳が一切なければ、

・人口の 3割ちょいは、男性と女性で法的な結婚をし
・人口の 3割ちょいは、それ以外の形で(法的な結婚をせずに)パートナーと生活を共にし
・人口の 3割ちょいは、特定のパートナーを持たない、もしくは、子供を産んだり育てることに興味をもたない

くらいの割合になると(あたしは)思ってる。

生涯未婚率が高まってることがよく問題にされるけど、もし社会に「普通はそうするものだ」とか「それが幸せの形である」という感覚がなければ、

実際にはもっともっと「男性と女性で法的に結婚する」以外の生き方を望んでる人は多いんじゃないかな。


子供を産んだ人の中にだって「子供なんて特にほしいわけじゃなかった」「育てるの面倒。自分の人生のほうが大事」な人は一定数いると思う。

でもそしてそういう人も、周りに責められたり、自分で自分を責めたりしながら暮らしてるんじゃないでしょうか。

「子供に愛情をもてない自分は欠陥人間なんじゃないか?」みたいな感じで。


というわけで、特になにも結論はないのですが、「カラフルファミリー」という番組を見ていろいろ考えたので、覚え書きしておきました。

とりあげられていた方、本も出されているみたいです。



そんじゃーね