大前研一「ニュースの視点」Blog

KON839「米企業業績/米ユナイテッド航空/良品計画/米ウーバーテクノロジーズ~経営者はプランBを想定して準備するべき」

2020年7月27日 米ウーバーテクノロジーズ 米ユナイテッド航空 米企業業績 良品計画

本文の内容
  • 米企業業績 米企業、純利益半減も
  • 米ユナイテッド航空 約3万6000人削減の可能性を社内に通知
  • 良品計画 米子会社が米連邦破産法第11条を申請
  • 米ウーバーテクノロジーズ 米ポストメイツを買収

新型コロナウイルスの影響、経営者はプランBを想定して準備するべき


日経新聞は、11日「米企業、純利益半減も」と題する記事を掲載しました。

米企業の2020年4~6月期の決算が本格化するのを前に、市場では、純利益が前年同期比で半減するとの見通しが広がっていると紹介。

しかし、航空や自動車の赤字が目立つ一方で、デジタルトランスフォーメーションを追い風にIT企業などは健闘しており、アナリストは、経済再開を前提に年後半の収益の回復を見込んでいるとしています。

利益は半減どころでは済まない状況になるはずです。

おそらく、しばらくの間、底辺から回復しないだろう、と私は見ています。

そして、米国だけでなく日本も状況は全く変わりません。

例えば、飲食店を見てみると、ソーシャルディスタンスで間隔を空けて座らせる対応などを取っているため、満席になっても通常の半分程度しかお客さんが埋まりませんし、簡単に元に戻ることはないと容易に想像できます。

今後、日本でも倒産が連続して起こってくる可能性は極めて高いと思います。

新型コロナウイルスの影響は「今秋にはひと段落するのではないか?」という見方もありますが、米国・ブラジル・インドの様子などを見ていると、とても数カ月後に収束するとは思えません。

また、欧州ではバケーションの時期になって外出する人も増えてきているので、第2波、第3波を引き起こす可能性は高いと見るべきです。

秋口に収束する見込みが薄いので、当然のことながら、来年の東京オリンピック開催も絶望的だと考えた方が良いでしょう。

そして、企業としては、最悪の場合を想定したプランBを念頭において、今後3年ぐらい影響が出ると考えるべきだと思います。

米国政府が6月に発表した赤字額は1カ月だけで去年の赤字1年分に相当していました。

率直に言えば、どうしようもないほど酷い状況です。

それゆえ、政府の景気対策に頼ることなく、経営者はプランBとして「元の状態に戻ることはなく、社会が新しく生まれ変わる」いう認識のもとで物事を考えていくべきだと思います。

自分自身、自分の会社はプランBに耐えられるのか?

これを真剣に考えることが重要です。




大規模リストラ方針を早めに発表した経営者の判断


米航空大手・ユナイテッド航空は、全従業員の約4割に相当する3万6000人を10月以降削減する可能性があることを社内に通知しました。

新型コロナウイルスの感染拡大で旅客需要が長期間低迷する可能性を見据え、大規模なリストラに踏み切る方針です。

ユナイテッドの従業員にとっては非常に悲しいニュースですが、これはもう致し方のないことだと思います。

おそらく、この業界は「10年は元に戻らない」というぐらい追い込まれています。

特に、国をまたいで飛ぶ国際線の置かれている状況は非常に厳しく、「楽観的に見ても半減、下手をすると回復しても半減以下」となる可能性もあります。

いつか状況が改善し、昔と同じような路線が組めるというのは考えない方が良いと私は思います。

それゆえ、ユナイテッド航空が発表した4割の人材削減というのも、致し方のないことだと私は思います。

まだ日本では、ここまではっきりと絶望的な状況を明言する経営者はいません。

日本でも同じく航空業界は非常に厳しい状況です。

しかし、ユナイテッド航空のような決断・発表は一切ありません。

日本政府そのものがパニックになっているというのもあるでしょうが、日本には、冷静に厳しい状況を伝えて明言する勇気を持った経営者が少ないのだと私は思います。

その点から考えると、ユナイテッド航空がこのタイミングで厳しい状況を明確に伝えたのは評価に値すると思います。

こうした旅客業界の状況を考えても、経済的な意味だけでなく、来年の東京オリンピック開催は絶望的です。

無観客による開催はなしで、再延期もないということですから、私は物理的な意味で中止になってしまうと見ています。

奇跡的に、今年の10月くらいから飛行機も国をまたいで飛ぶようになってくれば、わずかな望みがあるかもしれません。

しかしそれでも、オリンピックの最大級の選手団と応援団は中国ですから、「選手や応援団を日本は歓迎して受け入れるのか?」というと、その点だけ見ても開催できない理由になる可能性があると私は思います。




良品計画の米子会社破産は、かすり傷程度の影響しかない


良品計画は10日、米子会社・MUJI U.S.Aが米連邦破産法第11条の適用を申請したと発表しました。

良品計画は知名度の向上を狙い、ニューヨークなどで路面店の出店を続けてきましたが、高い家賃が収益の重荷になっていた事に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による営業休止が追い打ちをかけ、業績が急速に悪化しました。

これは新型コロナウイルスの感染拡大という「良い言い訳」ができたということで、この機会を利用して破産法の適用を申請してしまおうというものだと思います。

良品計画の地域別業績を見ると、もともと欧米は赤字が拡大していて、新型コロナウイルス感染拡大の影響がなかったとしても、米国の店舗を閉鎖してもおかしくない状況でした。

この状況から米国の店舗を立て直すのは非常に難しいので、破産申請をするという判断は頷けます。

とは言え、良品計画の海外店舗数を見ると、米国の店舗数は香港よりも少なく、良品計画全体から考えれば、米国からの撤退は、かすり傷程度のものでしょう。




ウーバーのポストメイツ買収は大きな効果は期待できない


米ウーバーテクノロジーズは6日、米料理宅配サービス4位のポストメイツを買収すると発表しました。

買収額は26億5000万ドル(約2800億円)で、実現すればウーバーは首位のドアダッシュに続く米国内シェア2位に浮上します。

この買収策はあまり良いアイディアではないと私は思います。

首位のドアダッシュが市場シェアの44%、2位のグラブハブが23%、3位のウーバーイーツが同じく23%、4位のポストメイツが8%という市場が形成されています。

ウーバーイーツとポストメイツが合併すると31%のシェアになり、業界2位に躍り出ます。

しかし業界2位になったとしても、今この業界は全ての企業がこぞって赤字を垂れ流しながらシェアを奪おうとしている状況です。

この合併によって大きくシェアを確保することで、圧倒的に優位に立てるという状況ではないと私は思います。

ウーバーは資金を潤沢に持っているので、このような買収を仕掛けても余裕はあるのでしょうが、効果はそれほど期待できません。

最終的に、ドアダッシュとウーバーイーツに投資しているソフトバンクとしては、両者が一緒になってもらえたらベストと考えているはずですが、さすがにこの2社が合併するとなると、独禁法に抵触するので難しいところでしょう。




---
※この記事は7月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は米企業業績のニュースを大前が解説しました。

大前は、新型コロナウイルスの影響について、「今後3年ぐらい影響が出ると考えるべき」と述べています。

5月に緊急事態宣言が解除されてから、すこしずつ日常が戻ってきているように感じます。

しかし、今後の計画を立てる際には、楽観的なシナリオをベースに描くだけでなく、常に最悪のシナリオを想定しながら考えることが大切です。


▼働きながら学ぶBOND大学ビジネススクール
AACSB&EQUIS認証取得国際標準MBA|年3回開講(1月・5月・9月)
【修了生体験談発表&受講相談会】7/30(木)19時オンライン開催
https://www.bbt757.com/bond/6234/

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点