経団連の21世紀政策研究所の経済政策レポートが発表された。財政タカ派の財界から、こういう「積極財政」論が出てくるのは珍しい。メンバーは永濱利廣、飯田泰之といった(今は亡き)リフレ派だが、もはや金融政策の話は何も出ていない。メインは「高圧経済」つまり財政赤字で経済を刺激しろという話である。
理論的な中身はブランシャールの「最適財政論」とほとんど同じで、新味はないが妥当なところだろう。日本のようにずっと需要不足の続いている社会で、政府がプライマリーバランス赤字ばかり心配するのはおかしい。
来年度の骨太の方針でもPB黒字化目標を書くかどうかという下らない話でもめる原因は、財政運営の基準となっているGDPギャップに過少評価バイアスがあることだ。ISバランスで考えると、
財政赤字=貯蓄-投資-経常収支黒字
なので、恒常的に「貯蓄>投資」になっている日本では、ある程度の財政赤字がないと、貯蓄過剰(需要不足)を埋めることができない。いいかえると均衡が必要なのはプライマリーバランスではなく、
財政赤字=民間の需要不足
となるように財政運営すべきだということだ。このレポートのいうように財政赤字がすべての問題を解決するとは思わないが、日本のようなゼロ金利では当面ラーナーの機能的財政論が正しい。問題はその長期的影響である。
では財政赤字で成長率は上がるだろうか。民間の投資収益率が成長率を下回っている状態で、政府がそれ以上のリターンを上げることはできない。これは生産的政府支出の問題で、バラマキ給付金や社会保障給付のような消費的支出の生産性は低い。
政府投資の生産性が高いのは教育、医療、エネルギーのように外部性の大きいインフラ投資である。非生産的な大学を切り捨てて幼児教育に投資することは意味があり、医療も公立病院を増やす必要がある。原発を国有化して、政府がリスク管理することも考えられる。
このように財政赤字のメリットは何に支出するかという各論で決まるので、マクロ経済的な議論では解決しない。このレポートの具体策は雇用流動化とか地域活性化とか凡庸で、目新しいメニューはない。
これはその通りで、国債を原則禁止する規定や60年償還ルールなど昔の均衡財政のころの法律は改正すべきだ。そういう改正が財政規律を弛緩させるという批判もあるが、財務省は過剰に緊縮的なので、規律が多少ゆるんだほうがいい。
理論的な中身はブランシャールの「最適財政論」とほとんど同じで、新味はないが妥当なところだろう。日本のようにずっと需要不足の続いている社会で、政府がプライマリーバランス赤字ばかり心配するのはおかしい。
来年度の骨太の方針でもPB黒字化目標を書くかどうかという下らない話でもめる原因は、財政運営の基準となっているGDPギャップに過少評価バイアスがあることだ。ISバランスで考えると、
財政赤字=貯蓄-投資-経常収支黒字
なので、恒常的に「貯蓄>投資」になっている日本では、ある程度の財政赤字がないと、貯蓄過剰(需要不足)を埋めることができない。いいかえると均衡が必要なのはプライマリーバランスではなく、
財政赤字=民間の需要不足
となるように財政運営すべきだということだ。このレポートのいうように財政赤字がすべての問題を解決するとは思わないが、日本のようなゼロ金利では当面ラーナーの機能的財政論が正しい。問題はその長期的影響である。
政府支出の生産性は民間より高いか
このレポートでは、社会保障などの長期の財政運営にほとんどふれていないが、財政赤字が蓄積して金利が上がると、将来世代の負担が増えるおそれがある。いいかえると「長期金利<名目成長率」になっている動学的に非効率な経済では、財政赤字のメリットがコストを上回る。では財政赤字で成長率は上がるだろうか。民間の投資収益率が成長率を下回っている状態で、政府がそれ以上のリターンを上げることはできない。これは生産的政府支出の問題で、バラマキ給付金や社会保障給付のような消費的支出の生産性は低い。
政府投資の生産性が高いのは教育、医療、エネルギーのように外部性の大きいインフラ投資である。非生産的な大学を切り捨てて幼児教育に投資することは意味があり、医療も公立病院を増やす必要がある。原発を国有化して、政府がリスク管理することも考えられる。
このように財政赤字のメリットは何に支出するかという各論で決まるので、マクロ経済的な議論では解決しない。このレポートの具体策は雇用流動化とか地域活性化とか凡庸で、目新しいメニューはない。
国債発行ルールの変更が必要だ
ちょっとおもしろい指摘は、一般会計の「国債費」が過大に計上されているという話だ。これは国債を60年で償還するコストを計上しているのだが、実際には日銀が借り替えに応じている。この借り替え額は歳入に計上されているが償還額と相殺できるので、歳出は17.5%水増しされている。これはその通りで、国債を原則禁止する規定や60年償還ルールなど昔の均衡財政のころの法律は改正すべきだ。そういう改正が財政規律を弛緩させるという批判もあるが、財務省は過剰に緊縮的なので、規律が多少ゆるんだほうがいい。