日本ではもうすぐ(今年もまた!)大雨の季節がやってきます。
日本の災害と言えば以前は地震や津波でしたが、最近は大雨による土砂崩れ、川の氾濫、低地の内水氾濫と、大規模な水害が毎年のように起きています。
しかも、日本全国で。
山あいや川沿いの里山地区だけでなく、新幹線の駅に近いような新興住宅地や、東京の川沿いに建つ億ションでさえ大きな水害のリスクがあるなんて、「聞いてねえよ!」って感じですよね。
そういえばもともと海や川だった埋め立て地にたつ住宅では、液状化のリスクもよく知られ始めました。
★★★
これまで私も含め多くの人は「家を買う」とき、「立地と値段」くらいしか考えてきませんでした。
でもこれからは、「ここに不動産を買って大丈夫なのか?」という視点もとても大事になります。
そんなとき、土壌や地形に関する専門知識がない一般人にもわかりやすく「家の立地にはどんなリスクがあるのか」「何をどう調べれば良いのか」を詳しく説明してくれる本に出会いました。
この本です。
著者の長嶋修氏は不動産コンサルタントで、株式会社さくら事務所の代表。本書は、同社に務める複数の専門家が分担して執筆されています。
目次を見るとわかりますが、昨今の日本で起きた様々な災害を振り返りつつ、最初の章でどーんと「不動産の災害リスクは自己責任」だと断言されてます。
プロローグ 露呈した年の脆弱性
第一章 不動産の災害リスクは自己責任である
第二章 土地の良し悪しをどう見分けるか
第三章 マンションは想像以上に風水害に弱い
第四章 こんな一戸建てに注意せよ
第五章 減災のための事前対策と事後対策
・マンションの事前対策、一戸建ての事前対策、事後対策
家を買って、災害にあって被害を受けたら自己責任。
たしかにそうなんでしょうが、
でも!
だったら!
「もっとちゃんと考えて買わなくちゃ!」「ちゃんと備えておかなくちゃ!」と思いますよね。
読み進むと、マンションのリスク、そして、東京によくある「半地下付き3階建て」みたいな一戸建てのリスクが、手に取るようにわかります。
最近は東京近郊でも、窓から川や海の見える立地のマンションが大人気ですが、こういった立地にはそれなりのリスクがあることも、改めて理解できました。
注文住宅を建てる場合でも、デザインを優先して庇のない形にしてしまうことのリスク、床下やバルコニーの水害対策など、具体的に役立つ知識が満載です。
なにより!
私がこの本をみなさんに薦めようと思った理由は、「めっちゃわかりやすく書かれている」から、ということです。
こういう本って、専門的にしようと思えばいくらでも専門的にできます。
でもそれじゃあ、素人にはぜんぜんわからなくなる。
ところがこの本は、私でもほぼ100%理解できるくらい簡単に書かれています。
これはこういう本の「大きな価値」だと思います。
唯一「惜しい!」と思ったのは、次の部分
オーソドックスな屋根の形状として「切妻屋根」「寄棟屋根」「片流れ屋根」「陸屋根」などがあります。このうち雨漏りしやすいのは・・・
私が編集者だったら、ここは間違いなく、それぞれの屋根の形状イラストを入れることでしょう。
「オーソドックスな」と書いてあるので、執筆者(著者)にとっては「あたりまえ」のことなのでしょう。でも素人の中には「切妻屋根ってなに?」「寄棟屋根ってどんなの?」って人も多いはず。
ググればわかることではありますが、できれば本の中にそれぞれの屋根の形がわかるイラストを載せておいたほうが親切だと思います。
んが、
それくらいしか突っ込みどころのない、とてもいい本でした。
周囲に川もない、ごく普通の住宅地でも、「旧河道」に面しているなど、潜在的にリスクのある土地が存在するとか、高台の住宅地でも、家の形状によっては浸水しかねないとか、この本を読んで初めて理解できました。
さらに自分の家がそういう立地だとわかった場合、何をどう備えておくべきかなど、「問題解決の方法=減災のための方法」の提案も具体的で役立ちました。
加えて(社会派ブロガーとしては)なぜこんな危ない地域でも宅地開発が行われてきたのか、という行政側の事情についても大変勉強になりました。
災害リスクは賃貸派の人にも無縁ではありません。不動産のリスクはなくても、いったん災害が起きると生活に与える影響は甚大です。
1000円未満で買える本です。
一般教養として、誰もが一度は目を通しておいたらいいんじゃないかな。
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