文在寅「日本叩き」で大ピンチ、日韓「共倒れ」が深刻化してきた…! 日鉄資産差し押さえ、謝罪安倍首相像…

現代ビジネスに8月28日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75167

ほかの国との貿易は減っていないのに

日韓間の貿易額の落ち込みが激しい。財務省が8月19日に発表した7月分の貿易統計(速報)によると、韓国向け輸出が前年同月比で14.1%減、輸入が21.4%減と大幅に減少した。

輸出入を合算した貿易額は16.9%減で、5カ月連続のマイナス。5月の21.8%減、6月の15.5%減に続いて3カ月連続の2ケタの減少になった。

もちろん、新型コロナウイルスの蔓延による貿易の減少が打撃を与えているのは間違いない。

もっとも、中国との間の貿易額は6月にプラスになったほか、7月も2.0%の減少に留まっているほか、台湾との貿易額は4月以降プラスが続いている。

そんな中で、韓国との貿易額が激減している背景には、急速に冷え込んでいる日韓関係があるとみられる。

差し押さえ資産現金化は決定打になるぞ

韓国における元徴用工訴訟で、新日鉄住金(現日本製鉄)に賠償を命じた韓国大法院(最高裁)の判決を受け、大邱地裁による資産の差し押さえ通知書が同社に届いたと見なす「公示送達」の手続きが8月4日午前零時に完了し、発効した。日本製鉄は「即時抗告」を行ったため、資産が売却・現金化される事態には至っていない。

菅義偉官房長官は8月4日の記者会見で、「大法院判決は国際法違反」という立場を強調、「現金化に至ることになれば深刻な状況を招くので避けなければならない」と韓国政府に伝えることを改めて明言した。厳しい警告を発した形である。

日本が半導体関連素材の韓国への輸出管理を強化したことが、徴用工問題への対抗措置だとして、韓国は日韓間のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を破棄することを表明したが、その後、米国の圧力もあり破棄を停止。今年も8月24日が破棄通告の期限だったが、韓国側からの申し出はなく自動延長される見通しになっている。

それでも、公館前の慰安婦像の設置や、安倍晋三首相がモデルとされる慰安婦像に土下座する像の設置など、日韓関係を冷やす問題が繰り返し起きている。

とくに、徴用工訴訟に伴う資産差し押さえと現金化の動きには、日本の多くの企業がかたずを飲んで注視している。徴用工問題は日本製鉄にとどまらず、戦前から続く日本企業にとっても、訴訟対象になる可能性があり、他人事ではないからだ。

「一般の国民の間で反日感情が高まっているわけではないのだが、政府がどう動くか読み切れず、カントリーリスクが急上昇している」と大手企業の幹部は言う。こうしたことも、韓国との取引拡大には慎重にならざるをえない一因になっており、これが貿易額に影を落としている。

コロナ以前から観光客は激減

人の動きも激減している。JINTO(日本政府観光局)の推計によると、日本を訪れた訪日客は、新型コロナウイルスの影響で、3月以降ほぼ「消滅」している。訪日客の総数は4月から7月まで4カ月連続で対前年同月比99.9%減となった。

もっとも、新型コロナ以前から韓国からの訪日客は激減していた。GSOMIA問題などが盛り上がった2019年8月に対前年同月比48.0%減となって以降、9月58.0%減→10月65.5%減→11月65.1%減→12月63.6%減と、新型コロナとは関係なしに訪日客が半減していた。

2018年には年間753万人が日本をおとずれていたが、2019年には558万人に減少。新型コロナが収束に向かったとしても、このままの状況が続けば、2020年は100万人におおきく届かないまま終わりそうだ。

中国では新型コロナの蔓延がピークを超え、生産活動などが再開されていることから、日本を訪れる中国人ビジネスマンも徐々に増加する可能性がありそうだ。一方で、韓国との間での人の動きは、新型コロナが収束に向かったとしても回復しないのではないか、という悲観的な見方もある。

薄れていくつながり

「産業の米」とも言われる半導体製造など、韓国と日本はサプライチェーンで結ばれてきた。貿易額でみると、日本からの輸出が、韓国からの輸入を上回っており、いわゆる「貿易黒字」だが、貿易収支以上に、部品や製品の調達で相互依存関係にある。

一方で、月別でみると2017年3月には5600億円を超えていた対韓輸出額が7月には3700億円にまで減少。輸入額も2014年1月に3350億円を記録したのをピークに漸減傾向にある。

この7月の輸入額は2160億円あまりだ。両国間の貿易が細れば、経済的な結びつきも徐々に細くなっていく。「ひと・もの・かね」の結びつきが減れば、外交でも両国関係が疎くなっていくことになりかねない。

日本での韓流ドラマの根強い人気や、若い世代での韓国コスメのブームなど、国民同士がかならずしもいがみ合っているわけではない。安全保障の観点からも、経済的、社会的な関係を維持し、深めていくことにこそ意味があると考えられる。

民間同士の経済的なつながりの希薄化をこれ以上進めないことが、日韓関係をこれ以上冷却化させないためにも、日本の安全保障上も極めて重要になってきそうだ。