だいずせんせいの持続性学入門

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バーチャルレクチャー空き家活用と移住定住指南(1)

2022-11-30 17:14:47 | Weblog
 空き家には大きく分けて2種類あります。不動産価値のあるものと無いものと。日本では家屋は20年もたてば不動産評価額はゼロになります。つまり空き家の不動産価値とは家自体ではなくその下の土地の価値です。その土地の値段が家の解体費用よりも安いと不動産価値は無いということに(むしろマイナス)。中山間地域の空き家物件はほぼこのパターンなので不動産屋さんは扱いません。なので田舎では空き家に関する不動産情報はなく、家主も活用しようと思ってもどうすれば良いか分かりません。
 そこで多くの市町村が空き家バンクを開設しています。民間がやらない(できない)ので行政が税金を使ってやるということです。不動産価値はなくても使用価値はあります。行政が採算度外視で仲介してくれれば物件は動くということです。
 ところが空き家バンクにはめぼしい物件の情報はまず載っていません。いい物件が出るとすぐに希望者が現れて決まります。つまり、希望者の数に対して出てくる物件数が圧倒的に足らないのです。そこで希望者は数少ないチャンスを逃さないように、各地の空き家バンクの情報を目を皿のようにして毎日チェックする必要があります。地域は空き家だらけなのに、なぜこういうことになるのでしょうか?
 空き家が発生する過程を考えると理解できます。空き家が出るのは、そこに住んでいた高齢者が亡くなるか施設に入ったり子どもたちのところに引き取られたりする場合です。(実質的)家主はその息子さん娘さんということになります。彼らはそこで生まれ育ったのち、高校、大学進学などで家を離れ、都会で就職し、結婚し、家を建て、という暮らしをしています。彼らはまず自分の家が「空き家」になったという認識がありません。単に実家に誰も住んでいない、ということです。「空き家」について話をすると「いやうちは空き家ではない。荷物を置いている、法事の時に兄弟親戚が集まる」という答えが返ってきます。人様に貸したり売ったりという発想はありません。あくまで自分の実家です。つまり、こういう家主さんに対して、誰かが「空き家バンクに登録して貸したり売ったりしませんか」と働きかけなければ、家主さん自ら登録するということはないわけです。
 ただ、管理はしなくてはいけません。時々行って風を通したり、庭や周囲の草刈りをしたり。最初のうちは定期的に訪れて管理していますが、そのうちしんどくなってきます。時間もお金もかかることになり、「お荷物」感が出てきます。
 そういうタイミングで地域の人が「貸したり売ったりしませんか」という働きかけをしたとして、次のような理由で「そういうつもりはありません」という答えが返ってきます。
1)荷物がある お父さんお母さんが最後に暮らしていた荷物がそのままあります。これを片付けようとしたら途方もないことです。
2)仏壇がある 仏壇を都会の家には持っていけませんのでそのままになっています。それを人様に貸したりできません。
3)時々使っている、もしくは将来親族の誰かが使うかもしれない 法事の時とかに年に1、2回使うような話です。「使うかもしれない」というのが実際に使われた事例はほぼないですね。
4)修理が必要だがそんなお金はかけられない 水周りが壊れているとか、床がベコベコしているとか、とても人様に貸せるような状態ではない。それを修理するようなお金をかけることはできない。
5)どんな人が入るかわからない 貸す場合には勝手にリフォームされたりしてとんでもないことになるかもしれない。入った人が地域の人たちと上手くやっていけるかどうかわからない。トラブルになった場合、家主の責任を問われる。売る場合には先祖代々受け継いできた家が自分の代で失われて良いのかという気持ち
6)めんどくさい 相続登記がされていなかったり、土地の境界がわからなかったりするので、それらを全部クリアしようと思うとやる気が失せる。
 これまでの各地の経験では「貸せない売らない」理由はこの6つにつきます。いずれにせよ、これらは家主にとって「リスク」要因です。お金に困っているわけでもないので、あえてリスクをおかす必要はない。これが空き家のまま管理もしくは放置されている理由です。
 では、どうしたら活用してもらえるのでしょうか?(つづく)
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