No. 2107 なぜボーイングはこんなにひどい会社なのか?

Why Is Boeing Such a Crappy Company?

ウォール街は、ボーイングが経験豊富で労働組合に加入している従業員を使って社内で部品を生産し続けるよりも、アウトソース(外注)することを望んだ。その方が安上がりだったからだ。

by Robert B Reich

金曜日、オレゴン州メドフォードにあるローグ・バレー国際空港の整備工たちはサンフランシスコから着陸したユナイテッド航空の飛行機に外部パネルが欠けているのを発見した。

この飛行機はボーイング社製だった。乗客139人と乗員6人を乗せていた。負傷者はいなかった。欠落したパネルは飛行中に気づかれなかった。

先週、ボーイング787ドリームライナージェットがオーストラリアからニュージーランドへのフライト中に急降下し、50人が負傷した。その後ボーイング社は、操縦席のスイッチに緩みがあり、「意図しない座席の動きが生じ」操縦に影響を及ぼす可能性があるとして、航空会社に注意を促した。

これらの最新の出来事は、1月にボーイング737マックス9型機で離陸数分後に客室ドアが吹き飛んだ後に発生している。この事故はアラスカ航空1282便で、機体側面にぽっかりと穴が開き、緊急着陸を余儀なくされた。

アラスカ航空の客室ドアの吹き飛び事故以来、連邦当局は(連邦航空局(FAA)や国家運輸安全委員会(NTSB)を含む)調査を開始し、171機のボーイング機に検査を義務付けた。

ユナイテッド航空とアラスカ航空によると、これらの検査で複数の航空機のボルトやその他の金具の締め付けが十分でないことが判明したという。アラスカ航空の吹き飛びに関与したドアパネルには、4本のボルトが欠けていた。

ボーイング737マックスは、2018年と2019年にボーイング737マックス8型機が数百人の死者を出した2件の墜落事故の後、多くの国がボーイング737マックス8型機を飛行禁止にするなど、数年前から安全性の懸念の対象になっている。

ボーイング社に関する2021年12月の上院報告書は、同社の慢性的な人員不足と、社内のエンジニアから提起された懸念の軽視を批判した。

この上院報告書は、ボーイング社の生産慣行を懸念する7人の内部告発者(以前ボーイングで働いていた者も含む)の証言に基づいている。最近、もう一人の内部告発者であり、ボーイングの元品質管理マネジャーであったジョン・バーネットは自殺と見られる死を遂げている。

根本的な問題は何なのか?なぜボーイングは品質管理の面でこれほどお粗末な会社になってしまったのか?

先月、ボーイング社はスキャンダルに発展するような問題が起きたときに、ほとんどの大企業が行うことを行った。リーダーシップ・チームの変更である。737マックスのプログラム責任者であったエド・クラークを、それまで737マックスの納入担当副社長であったケイティ・リングゴールドに交代させ、エリザベス・ルンドのためにボーイング商用機の品質を監督する新たな幹部職を設けたのだ。

これで十分なのだろうか?ボーイング社にとってヨーロッパ最大の顧客であるライアンエアーのマイケル・オレアリーCEOは、この変更について次のように語っている。

      企業のでたらめだ。737型機の担当者と、安全担当者を置くということだ。なぜ737型機の担当者が安全担当ではないんだ?ボーイング社は3,500人のリーダーシップ・チームを持っているなどというでたらめなことを言うのが好きだが、それは浮き箱を設計している委員会のようなものだ。

私の友人であるハロルド・メイヤーソンが先月『アメリカン・プロスペクト』誌に書いたように、ボーイング社の品質管理上の問題はリーダーシップ・チームを超越している。それが初めて明らかになったのは2001年、ボーイングのエンジニアが、同社が組み立てた航空機の主要部分をアウトソースするという決定に対して警告を発したのだ。 

しかし、ウォール街はボーイングが経験豊富で労働組合に加入している従業員を使って社内で部品を生産し続けるよりも、アウトソースすることを望んだ。その方が安上がりだったからだ。ボーイングの新役員たちは、生産部門のキャリアからではなく業界の財務部門から着任していたのでウォール街の要求に素早く対応した。

2005年、ボーイングはウィチタ工場をプライベート・エクイティ企業に売却してコストを削減した。その後工場は品質検査の欠陥で悪名高いスピリット・エアロシステムズに売却された。ボーイングは、スピリットの高コストと納期を守れないことに異議を唱えた。現場の労働者と労働組合が繰り返し指摘したように、これは急ぎの生産と不十分な監督につながった。

ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたように、国際機械工組合の組合代表は、ボーイング社の労働者たちは「品質と安全性に大きな懸念」を抱いているが、彼らの懸念は上層部によって日常的に無視されている、と組合幹部に手紙を書いた。

民間航空機製造におけるボーイング社の主な世界的競争相手はヨーロッパのエアバスである。エアバスの筆頭株主は、主に政治的説明責任を負う政府であり、航空安全といった公共の懸念に耳を傾けなければならない。(エアバスの4大株主は、順にフランス政府、ドイツ政府、キャピタル・リサーチ・アンド・マネジメント社、スペイン政府である)。

これとは対照的に、ボーイング社の主要投資家は完全に利益目当てである。(その4大株主は、順に、バンガード・グループ、バンガード・グループのサブファイラー、ニューポート・トラスト・カンパニー、ステート・ストリート・コーポレーション(銀行および資産運用会社)である)。

また、エアバスはドイツ、フランス、スペインの企業が合併した会社であるため、エアバスの生産施設は、歴史的にも現在も労働者が米国の労働者よりも大きな力を持っている国に集中している。エアバスの従業員約13万人のうち4万6千人がドイツの工場で働いており、そこでは法律により、労働者は日常的に労働者評議会で生産・安全問題について経営者と話し合っている。

米国では、機械工組合の労働者は米国の基準では発言力と権力をもっているが、経営者が少なくとも彼らの懸念に耳を傾けなければならない従業員代表委員会のようなメカニズムがない。

言い換えれば、飛行安全に関する問題でエアバスがボーイングに対して明らかにリードしているのは所有者と労働者の力の違いによるところが大きい。つまり、自由放任の資本主義を公共と労働者の力で緩和するというヨーロッパのモデルと、企業政策をほぼ全面的に投資銀行家の要求に委ねるという米国のモデルの違いである。

しかしボーイング社の株価を追ってみれば、投資銀行家にとってもそれほど良い結果にはなっていない。

ボーイングの生産は、どの程度アウトソーシングされているのか?アラスカ航空の機体から吹き飛んだドアプラグは、実はウィチタで製造されたものではなかったことがアラスカ航空の吹き飛び事故から約2週間後に明らかになった。生産スピードや品質監督に関する労働者の懸念が米国よりもさらに管理者に影響を及ぼしにくい、マレーシアで生産されていたのである。

ドアプラグがマレーシアで作られたことが明らかになったのが吹き飛び事故から12日もたってからだったという事実は、アウトソースが企業の説明責任に必要な社会的可視性をいかに曖昧にしうるかを示唆している。

https://www.laprogressive.com/progressive-issues/boeing-such-a-crappy-company