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【誰が悪いのか】全国の高裁で初!福島原発事故、国と東電に賠償責任を認める判決。しかも地裁判決から大幅増額の10億円超え【安倍前総理も原発マフィアの一員】

2020年10月01日 | 福島原発事故

安倍首相追放の次は菅政権を打倒!

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安倍首相は福島原発事故の可能性(全電源喪失→冷却機能停止→メルトダウン)を指摘されていながら、これを無視してしまった主犯だ。

 

 

 東京電力福島第1原発事故当時、福島県や隣県に住んでいた約3600人が国と東電に総額約210億円の損害賠償などを求めた集団訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は2020年9月30日、1審・福島地裁判決(2017年10月)に続いて国と東電の責任を認めました。

 しかも、賠償額は1審判決の約5億円を約10億1000万円に大きく増額しました。

 原発訴訟の高裁判決としては3件目ですが、先の2件は東電のみを被告としていたので、国を被告に含めた同種訴訟の高裁判決は初めてで、もちろん、国の責任を認めた高裁判決も初めてです。

 ちなみに全国約30件の同種訴訟のうち、国を被告に含めた地裁判決は、これまで7件で国の責任を認め、6件で否定しており、判断が分かれていたので、高等裁判所が国の責任を認めた意味は非常に大きいのです。

 

 では、これまで国の責任を認める・認めないの地裁判決の判断はどこで分かれてきたのでしょうか。

 一般に、過失責任が認められるためには

1 あらかじめ被害が予測できたという予測可能性があったか

2 予見ができたなら予見し、悪い結果を回避する可能性があったか

3 予見可能性もあり、結果回避可能性もあったのに、できる努力をしないという義務違反が認められるか

が問題になります。 

 福島原発事故では、津波による原発事故を国が予測できたのかと言うことが最大の問題になりました。

 

 

 仙台高裁は

1 予測可能性ー政府の地震調査研究推進本部が2002年に「福島県沖を含む日本海溝沿いでマグニチュード8・2前後の津波地震が起きる可能性がある」とする長期評価を公表していたので、国にとっては今回の津波被害は予測できた

2 結果回避可能性ー津波が来る可能性があることを前提とすると、電源喪失などがないようにする様々な対策はとりえた

3 結果回避義務違反ーところが、東電は「長期評価は信頼性が定まっていない」としてすぐに津波対策に着手せず、国もそれを了承した

ことを事実として認定しました。

 

 そこで仙台高裁は

「国は10メートルを超える津波の到来を予見できた」

「予見しながら原発の規制権限を行使しなかったことは、著しく合理性を欠き、事故における国の責任は免れない」

として、国の責任を認めたのです。

 このような著しく合理性を欠く判断をした最大の責任者の一人が安倍前首相でした。

 原発事故の5年前に、国会質問でその可能性が指摘されていました。

 質問をしたのは京都大学工学部原子核工学科出身で日本共産党に所属していた吉井英勝衆院議員でした。

 吉井議員は以前から原発問題に取り組んでいたのですが、2006年から日本の原発が地震や津波で冷却機能を失う可能性があることを再三にわたって追及していました。

 

 

 そして、第一次安倍政権が誕生して3カ月後の2006年12月13日に、吉井議員は

「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」

を政府宛に提出し、

「原発からの高圧送電鉄塔が倒壊すると、原発の負荷電力ゼロになって原子炉停止(スクラムがかかる)だけでなく、停止した原発の機器冷却系を作動させるための外部電源が得られなくなるのではないか。」

という質問をしましたが、これはまさに福島原発事故で津波被害によって起きたことです。

 ところが、当時の安倍首相は12月22日付けの答弁書で

「外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である。」

と答えました。

 



 吉井議員はさらに

「現実には、自家発電機(ディーゼル発電機)の事故で原子炉が停止するなど、バックアップ機能が働かない原発事故があったのではないか。」

と質問しているのですが、これについても、安倍首相は

「我が国において、非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく、また、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない。」

と言い切りました。

 これに対して、吉井議員はスウェーデンのフォルスマルク原発で、4系列あったバックアップ電源のうち2系列が事故にあって機能しなくなった事実を指摘して

「日本の原発の約六割はバックアップ電源が二系列ではないのか。仮に、フォルクスマルク原発1号事故と同じように、二系列で事故が発生すると、機器冷却系の電源が全く取れなくなるのではないか。」

と追いつめているのですが、安倍首相は

「我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっていることなどから、同発電所一号炉の事案と同様の事態が発生するとは考えられない。」

と言ってしまっているのです。

 



 吉井議員が問題にしているのはバックアップ電源の数のことであり、原子炉の設計とは関係ないのに、安倍首相は

「設計が違うから、同様の事態が発生するとは考えられない」

と完全にピント外れのデタラメを強弁してしまったのです。

 そして、吉井議員がこの非常用電源喪失に関する調査や対策強化を求めたことに対しても、安倍首相は

「地震、津波等の自然災害への対策を含めた原子炉の安全性については、(中略)経済産業省が審査し、その審査の妥当性について原子力安全委員会が確認しているものであり、御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。」

と、現状で十分との認識を示しました。

 

 吉井議員が質問主意書で指摘した非常電源が喪失する事態が大津波で起こることは十分あり得た話で、現に東日本大震災でそれは起きました。

 ところが、国は大津波が来るという指摘を地震発生より9年も前の2002年に受けていましたから、全電源喪失にはならないように対策することは十分できました。

 ところが、そのことを吉井議員からその4年後に2006年に受けたのに、安倍首相は電源喪失は起こらないと言い切ってしまい、その5年後に福島原発事故を招いたのです。

 これほど重大なミスをした安倍氏を二回目の総理大臣返り咲きを許し、7年半以上も政権の座につかせてしまったのは日本の有権者に最悪の選択だったと言えます。

 せめて、今度は安倍前総理が病気に逃げ込んで責任を回避できないように、モリカケ・桜などすべての疑惑を徹底的に暴かないといけません。

 

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福島原発事故 冷却機能停止→炉心溶融・メルトダウン 原因は津波ではなく地震 受電鉄塔倒壊と復水器停止

 

東日本大震災、福島原発事故から7年。日本は前進したか。

 

東京電力福島第1原発。後方に原子炉建屋が建ち並ぶ=福島県大熊町で8月、本社ヘリから

 

 東京電力福島第1原発事故を巡り、福島県と隣県の住民や避難者が国と東電の責任を追及してきた集団訴訟。国が被告の同種訴訟で高裁初となった判決は、国側の完敗となった。仙台高裁は1審・福島地裁の認定より賠償の範囲と金額の双方を拡大し、国に対してより厳しい姿勢を示した。被災地の高裁で出された「初判断」が、今後の同種訴訟にいかなる影響を与えるのか注目される。

 国の責任の有無を判断するにあたり仙台高裁が重視したのは、国が原発事故を防ぐための規制権限を東京電力に適切に行使してきたかどうかだ。判決は、事故前の津波対策を巡る両者のやり取りを詳細に検討した。

 政府の地震調査研究推進本部は2002年に「福島県沖を含む日本海溝沿いでマグニチュード8・2前後の津波地震が起きる可能性がある」とする長期評価を公表。東電は「長期評価は信頼性が定まっていない」としてすぐに津波対策に着手せず、国もそれを了承した。国は06年、原子炉の耐震設計審査指針の改定に際し、津波に対する安全性の確保を電力会社に求めた。東電は08年、長期評価に基づいて最大15・7メートルとする想定津波を試算したが具体的対策を先送りした。

 判決は、長期評価について「客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であったことは動かしがたい」と評価し、国、東電ともに津波の予見可能性を認めた。その上で、耐震設計審査指針の改定などを踏まえると国は06年末までに東電に津波対策を取らせるなどの規制権限を行使すべきだったと結論付けた。国と東電は「防潮堤などの対策をしても事故は回避できなかった」と主張したが、判決は「的確な主張立証がされていない」として退けた。

 判決は国と東電の関係について「国は東電の経済的負担の大きさを恐れるあまり、(想定津波の)試算自体を避けようとしていたものと認めざるを得ない」と批判。1審は賠償責任の範囲を「国は東電の2分の1」としたが、2審は両者の間に差を認めなかった。

 また、2審判決は賠償の範囲や金額でも原告側を救済する内容となった。

 1審は国の原発賠償基準の「中間指針」を上回る賠償を認めたものの金額は1人当たり1万~36万円で、原告側は「被害を過小評価している」と主張してきた。2審は「ふるさと喪失」の損害などを認めた上で、多くの地域で賠償額を大幅に増額した。国や東電が上告する余地は残されているが、今回の判断が維持されれば賠償制度に影響する可能性がある。

 原子力規制に詳しい一橋大大学院の下山憲治教授(行政法)は「原発の安全確保に関する国や東電の姿勢を強く批判した判決。今回の判決が1審判決より国に厳しい判断となったのは、原発政策を推進し、設置許可権限もあるという立場を重視した結果だろう。また、責任を否定した他の判決とは逆に事故発生回避に関する重要な点で国や東電に証明を負わせるなど、厳しい姿勢で臨んだことも大きな特徴だ。高裁初の判決は、今後の同種訴訟に大きな影響を与えるだろう」と話している。【島田信幸、川村咲平】

続く判決に影響か

 福島第1原発事故の責任と賠償を巡り、国や東電に対して福島県や近隣県の住民や避難者が起こした集団訴訟は全国各地に広がり、約30の訴訟に計1万2000人が参加している。このうち、既に地裁判決が出た16件全てで、東電の責任は認められてきた。

 一方、このうち国も相手に含めた13件では、7件が国の責任を認め、6件が否定しており、判断が分かれている。2019年以降は国の責任を否定する判決が相次ぎ、8件のうち5件を占めていた。30日の仙台高裁判決は、この地裁の「否定判断」の流れを断ち切る形になった。

 国の責任を認めた7件の地裁判決では30日の判決と同様、政府の地震調査研究推進本部が02年に出した予測で、福島県沖でも巨大な津波地震が起きうると指摘した「長期評価」に信頼性があるとし、原発の敷地高を超え、非常用電源が浸水する津波を予見できたと判断。国が東電に対する規制権限を行使しなかったことの違法性を認めた。

 一方、国の責任を否定した6件の地裁判決は、津波の予見可能性を認めながらもその程度は低く、事故を防げた可能性は低いか認められないと指摘。当時は津波対策よりも地震対策が優先されていたなどとし、津波対策を東電に命じなかった国の対応が「著しく合理性を欠くとは言えない」と判断してきた。

 刑事裁判では、東電旧経営陣が業務上過失致死傷罪で強制起訴された公判で無罪とした19年9月の東京地裁判決が、長期評価は根拠が具体的でなく、専門家の意見も分かれていたなどとして「信頼性に限界があった」としていた。

 21年1月と2月に東京高裁で判決言い渡しが予定されている1審・前橋地裁と千葉地裁の原告側は、国の責任に関して今回と同様の主張・立証をしており、今回の判決が後続訴訟に影響を与える可能性がある。原告側の馬奈木厳太郎(いずたろう)弁護士は「地裁で国の責任を否定する判決が相次いでいたが、仙台高裁は原発で確保されるべき安全性は高く見積もられるべきだと示した」と評価した。【寺町六花】


原発事故と集団訴訟などの経過

2011年 3月 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が発生

      8月 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が原発事故の賠償基準「中間指針」を示す

  12年12月 避難指示区域の住民など18世帯40人が福島地裁いわき支部に提訴

  13年 3月 避難指示区域外の住民など1650人が福島地裁など計4地裁・支部に一斉提訴

  17年 3月 前橋地裁で初の判決。国・東電の責任を認める

      9月 千葉地裁で国の責任を否定する初判決

     10月 1審・福島地裁判決。国・東電の責任を認める

  19年 9月 強制起訴された東電旧経営陣3人の公判で東京地裁が無罪判決(検察官役の指定弁護士が控訴)

  20年 9月 2審・仙台高裁判決。国・東電の責任を認める


国を相手取った原発集団訴訟・各地の判決

                  国の責任 東電の責任

2017年 3月17日 前橋地裁  ○    ○

      9月22日 千葉地裁  ×    ○

     10月10日 福島地裁  ○    ○

  18年 3月15日 京都地裁  ○    ○

        16日 東京地裁  ○    ○

  19年 2月20日 横浜地裁  ○    ○

      3月14日 千葉地裁  × ○   

        26日 松山地裁  ○    ○

      8月 2日 名古屋地裁 ×    ○

     12月17日 山形地裁  ×    ○

  20年 3月10日 札幌地裁  ○    ○

      6月24日 福岡地裁  ×    ○

      8月11日 仙台地裁  ×    ○

      9月30日 仙台高裁  ○    ○

 ※○は責任を肯定、×は責任を否定

 

 

東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐり、福島県で暮らす住民など3600人余りが訴えた集団訴訟で、仙台高等裁判所は「大規模な津波が到来する可能性を事故の前に認識できたのに、国が東京電力に対策を求める権限を行使しなかったのは違法だ」などとして、国と東京電力に総額10億円余りの賠償を命じました。
全国の集団訴訟で、国の責任を認める2審判決は初めてです。

この裁判では、原発事故のあとも福島県内で暮らし続ける住民や避難した人など3600人余りが、生活の基盤が損なわれ精神的な苦痛を受けたとして国と東京電力に賠償を求めています。

1審の福島地方裁判所は3年前、国と東京電力の責任を認め、総額4億9000万円余りの賠償を命じていました。

30日の2審の判決で、仙台高等裁判所の上田哲裁判長は「平成14年に政府の地震調査研究推進本部が発表した地震の『長期評価』を踏まえた試算をしていれば、大規模な津波が到来する可能性を認識することができた。国が東京電力に対策を求める権限を行使しなかったのは違法だ」と指摘し、東京電力とともに国の責任を認めました。

また「国と東京電力は『長期評価』に基づく津波の試算を行って対策を講じた場合の、主に東京電力の経済的な負担などの影響の大きさを恐れるあまり、試算自体を避けるなどしたと認めざるを得ない」と、指摘しました。

そのうえで1審では、東京電力の半分にとどまるとした国の賠償責任の範囲について「国がみずからの責任で原発の設置を許可したもので、範囲を限定するのは相当ではない」などと指摘し、東京電力と同等の責任があるとして、国と東京電力に総額でおよそ10億1000万円の賠償を命じました。

全国の集団訴訟で、国の責任を認める2審判決は初めてで、各地で行われている裁判に影響を与える可能性があります。

原告団長「司法は生きていた」

判決のあと、原告団と弁護団が仙台市内で記者会見を行いました。

その中では、まず「国と東京電力の責任を明確に認めたことは、事故の再発防止や被害者の全面的な救済だけでなく、被災地の復興にとっても大きな意義がある。賠償の対象地域の拡大や賠償水準の上積みを認めた点は、原告のみにとどまらず広く被害者の救済をはかるという意味においても前進と評価できる」という声明を発表しました。

弁護団の事務局長、馬奈木厳太郎弁護士は「裁判が長期化し、判決を待たずしておよそ100人が亡くなった。この喜びを分かち合うことができないことは残念だ。東京電力と国は責任を認めて1日も早く救済すべきで、上告しないよう求めたい」と述べました。

会見後、原告団長を務める福島県相馬市の中島孝さんは「判決を聞いたとき、司法は生きていたと感じた。1審よりも踏み込んで国の政策が間違っていたことを示してくれてよかった」と話していました。

原告の果樹農家「原告1人1人に寄り添った判決」

原告の1人で福島市で果樹農家を営む阿部哲也さん(57)は、自宅のテレビで、国の責任を認めた2審判決の速報を見ると、ガッツポーズをして喜びを表していました。

阿部さんは、「原告団みんなの頑張りがこの判決に結びついたと思います。国の責任を認めることが私たちが一番望んでいたことなので、本当にほっとして涙が出そうです」と話していました。

そのうえで、「これまでたくさんの苦労や喪失感など精神的な被害を受けてきましたが、今回の判決で心が救われほっとしています。お金の問題ではない部分はありますが、とりあえず賠償という形で心にけじめをつけることはやむをえないと思いますので、原告1人1人に寄り添った判決になったと思います」と話していました。

東京電力「内容を精査し対応検討」

仙台高等裁判所が国と東京電力に賠償を命じたことについて、東京電力は、「当社、原子力発電所の事故により、福島県民の皆様をはじめ、広く社会の皆様に大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて心からお詫び申し上げます。本日、仙台高裁において、言い渡された判決について、今後、内容を精査し、対応を検討して参ります」とのコメントを出しました。

原子力規制委 更田委員長「厳正な規制進める」

仙台高等裁判所が国と東京電力に賠償を命じたことについて、原発事故が起きた当時の規制機関、「原子力安全・保安院」を引き継ぐ形で発足した原子力規制委員会の更田豊志委員長は、30日開かれた会見の中で、「判決の詳細がまだわからず、コメントは控えるが、原子力規制委員会は福島の原発事故に対する反省や怒りにもとづいて設置された組織だ。二度と原発事故を起こさないよう原発に対する厳正な規制を進めていきたいと改めて考えている」と述べました。

加藤官房長官「関係省庁で判決内容を精査し適切に対応」

加藤官房長官は、午後の記者会見で、「今後の対応については、関係省庁で判決内容を精査したうえで適切に対応していくと思う。いずれにしても、原子力発電所は安全が最優先であり、独立した原子力規制委員会で福島第一原発の事故を踏まえて策定された新規制基準への適合性審査を厳格に進めており、引き続きしっかり対応されると考えている」と述べました。

専門家「非常に画期的」

30日の2審の判決について、原発事故をめぐる国会の事故調査委員会の委員を務めた、中央大学法科大学院の野村修也教授は「国がいわば国策として進めてきた事業について、しっかりと命令をしなかったことや、東京電力に依存する形での監督しかできなかったことを大きな問題ととらえ、東電と同等の責任を共に負うべきだと判断したのは非常に画期的だ」と述べました。

そのうえで「今回の判決では、原発事故を避けることができたかどうかについて、国が証明できないかぎり責任を負いなさいという考え方が示された。このような判断のしかただと、事故を避けられたかどうかが不明確でも、国が責任を負う可能性が高くなってくる。ほかの裁判所の判断にどう影響するか注目したい」と話しました。

また、判決が国の規制当局としての在り方を厳しく非難したことについては「事故当時、東電の説明をうのみにしていたという点を厳しく指摘していて、判決の示したことを教訓として受け止め、規制当局としての在り方をいま一度確認してほしい」と指摘しました。

判断ポイント 国の責任

判決で仙台高等裁判所は、原発事故についての国の責任を厳しく指摘しました。

《津波を予測できたか》
判決では、事故の9年前の平成14年に、政府の地震調査研究推進本部が発表した地震の「長期評価」について「国みずからが設置し、多数の専門学者が参加した機関による重要な見解であり『長期評価』を踏まえて、直ちに試算を開始するよう東京電力に指示するか、みずから試算をするなどしていれば、大規模な津波が到来する可能性を認識できた」と指摘しました。

そのうえで「長期評価」をめぐる事故前の、国の対応について「不誠実ともいえる東京電力の報告を唯々諾々と受け入れ、規制当局に期待される役割を果たさなかったといわざるえない」と厳しく指摘しました。


《事故は避けられたか》
また、事故を防ぐことができたかどうかについて「原告側が、一定の程度で事故を防ぎえる具体的な対策を主張した場合、国は、その対策を行えなかったことや、行っても事故を防げないことを主張し、証明する必要がある」としました。
そのうえで「今回、原告が主張した室内に水が入らないようにする『水密化』の対策について、事故を防げなかったという的確な主張や証明がされていない以上、事故を防げた可能性があったと推測される」と指摘しました。
そして「国が規制の権限を行使しなかったのは違法だ」としました。


《国の責任の範囲は》
さらに判決は「国と東京電力は『長期評価』に基づく津波の試算が行われれば、対策を講じなければならなくなる可能性を認識しながら、そうなった場合の、主に東京電力の経済的な負担などの影響の大きさを恐れるあまり、試算自体を避け、あるいは試算結果が公になることを避けようとしていたと認めざるをえない」と、指摘しました。
1審では、東京電力の半分にとどまるとした国の賠償責任の範囲については「原子力発電所の設置・運営は国家のエネルギー政策に深く関わる問題であり、国がみずからの責任において原発の設置を許可したものであることを考慮すれば、責任の範囲を一部に限定することは相当ではない」として、東京電力と同等の責任があるとしました。

判断のポイント 賠償

2審の判決は1審と比べて賠償の対象範囲を広げました。

具体的には、事故の後に避難指示の対象になった福島県浪江町や富岡町などの原告について「ふるさとを喪失した損害がある」などとして賠償額を大幅に上積みしたり、新たに認めたりした人がいました。

また、国の指針や1審判決で賠償の対象にならなかった
▽福島県西部の会津地方や
▽宮城県南部の原告の一部への賠償も認めました。

その結果、賠償の総額は1審の4億9000万円余りから、2審は2倍以上となるおよそ10億1000万円に増えました。

判決で国と東京電力の対応に言及

判決では、これまでの裁判でも焦点となってきた専門家などでつくる国の地震調査研究推進本部が平成14年7月に公表した巨大地震の予測=長期評価について国と東京電力の対応に言及しました。

この時の長期評価は福島県沖を含む三陸沖から房総沖にかけてどこでも大きな津波を伴う地震が発生するリスクを指摘するもので、これを踏まえて国が、東京電力に対して、試算を開始するように指示するか、当時の規制当局の原子力安全・保安院が試算をするなどしていれば、10メートルを超える津波の可能性を認識できたとしています。

そのうえで、当時、専門家の間で見解が分かれていた長期評価の信頼性については、「国自らが地震に関する調査などのために設置し、多くの専門家が参加した機関が公表したもので、相当程度の客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であったことは動かしがたい」としました。

また、当時の原子力安全・保安院と東京電力など電力事業者が海外の事例などを踏まえて想定を超える津波や水漏れのリスクについて話し合っていた「溢水勉強会」と呼ばれる非公開の勉強会にも言及していて、平成18年には敷地を越える津波が到来すれば、重大事故を起こす危険性が認識されていたと指摘しています。

そして判決は、国と東京電力に対し「対応措置をとった場合の影響の大きさを恐れるあまり、試算を避け、あるいは試算結果が公になることを避けようとしていたものと認めざるを得ない」などとしています。

こうした判決に対して、原子力安全・保安院を引き継いで発足した原子力規制委員会の事務局の原子力規制庁は、「判決は承知しているが、個別の内容についてのコメントは控えたい。私たちとしては2度と原発事故を起こさないよう厳正な規制を行っていきたい」としています。

原子力規制委員会は事故で保安院が廃止された後、事故の教訓を踏まえ、原子力を推進する経済産業省から離れ、独立性を高めた、いわゆる「3条委員会」として発足した規制組織です。
 
 
 

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2 コメント

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[総集編、または 決定版 的記事] (バードストライク)
2020-10-02 10:05:39

裁判所は上級に行くほど権力に忖度し、一般市民の常識とはかけ離れた判決が出る、というのが、悲しいかな今までの常識ですが、今回はそれを覆す判決だったので大変嬉しく、一筋の光を見た思いです。
原告と弁護団、裁判官を讃えたいです。
ただし、金額が・・・

こちらの記事、安倍と原子力推進勢力の悪事の総集編というか、決定版というべきでしょう。

今後はくだらない原発擁護や、民主党政権時に福島原子力発電所事故が起きたので 「原発事故は民主党のせい」などととんでもない言いがかりをつけてくるネトウヨ・ネトサポに、この記事を突き付けてやるんだ。
Unknown (バードストライク)
2020-10-02 13:56:50
管理人様
この記事に対する あたいのコメントが載ってない

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