だいずせんせいの持続性学入門

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バーチャルレクチャー空き家活用と移住定住指南(5)

2022-11-30 17:23:36 | Weblog
 では移住希望者はどうやって住む地域を決め、空き家を借りたり買ったりすることができるでしょうか。まず、そもそも空き家バンクに継続的に空き家が出てくるのは、地域ぐるみで空き家活用と移住定住支援の取り組みをしているところだということを認識してください。そういう取り組みをしていない地域の空き家がまれには空き家バンクに出てきます。また民間の田舎移住専門の不動産情報に載っています。そういうところは慎重になった方が良いです。仮に入居できたとしても、地域に移住者を受け入れる気持ちがなければ、とても暮らしにくいことになります。
 地域ぐるみで取り組んでいるところは、地区の移住定住支援のホームページを持っていることが多いので、それで探すことができます。市町村よりももっと小さな地区に着目するということです。ホームページでは地区の一般的な紹介だけでなく、子育てに必要な保育園や小中学校の情報、医療機関の情報が載っています。また先に移住した先輩移住者のインタビューが載っていることも多いです。そして、移住定住支援をしている移住定住委員会なりの委員さんの「顔」がわかる内容になっていて、連絡先の情報があります。
 市町村の空き家バンクにはその地区の物件は載っていないかもしれません。しかし、地域ぐるみで取り組んでいるところは、バンクに載せるべく家主と話し合っている物件が必ずあります。もうすぐ載せられるという物件もあるし、まだまだ問題が多くてすぐには動かないという物件もあります。しかし、家主さんがそれなりに活用の意向を持ち、外観や内部を見学しても良いとしている物件がけっこうあるのです。
 そこで、いい空き家に出会おうと思ったら、足で稼ぐことが肝要です。空き家バンクに載る物件を待っているのではなく、積極的にこういう地区に出向いて、掲載前物件を見せてもらいましょう。
 連絡先にコンタクトを取り、その対応を見るのも大事です。場合によっては行政が窓口になっており、お役所仕事的にあしらわれることもあるかもしれません。そういう地区は敬遠しましょう。一方で、親身に話を聞いてくれて、「一度見学にお越しください」という話になれば、積極的に見学に行きましょう。現地では委員会メンバーの地元の人が同行してくれて、あらかじめ聞いていた移住希望者のだいたいの意向に沿った空き家物件を案内してくれます。
 中山間地域の空き家の見学では、まず建物を見ます。大きさ、間取り。次に水周り。トイレが外の汲み取り式、風呂も外というのはザラです。上水道はつながっているか、井戸や沢水か。下水(農村集落排水)や浄化槽(単独か合併か)は入っているか。携帯の電波が入るか、ケーブルテレビやインターネットの状況も聞いておきましょう。
 同時に傷み具合をチェックします。床がベコベコなのは普通です。土台や根太など床下を修復することは比較的簡単です。ポイントは雨漏りしていないか。雨漏りしていると、その周辺が腐ってきているはずです。範囲が狭ければ修復できますが(ただし屋根の葺き替えなど大規模な修繕が必要)、梁にまで損傷があると修復不能と判断して良いと思います。
 次に庭に出て、敷地を確認します。まず日当たり。冬になるとほとんど太陽が出ないという家もたくさんあります。次に土砂災害の危険性。裏山が切り立った斜面でしかも沢筋だとリスクが高いです。土砂災害警戒区域の指定状況を聞いておきましょう。いわゆるレッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)だと、家の増築や建て替えはできません。
 次に農地や山林。だいたい狭い畑は隣接していると思いますが、田んぼや山林が付いている場合もあります。その管理状況を見ます。農地は今でも耕作されていれば良いですが、長年耕作放棄されていると草ぼうぼうになり、場合によっては低木が侵入しています。ここに移住して農地をどう活用・管理するか、想像してみる必要があります。家の裏に回ると、たいてい山の木が鬱蒼と迫っていると思います。竹の場合もあります。これらは入居する際には伐採して風通しを良くした方が良いです。これもどうするか想像してみてください。また、敷地に隣接していない農地や山林がある場合がほとんどです。家主さんの意向を確認して、自由に使ってもいいよとか、手放したいということであれば、引き継ぐにはそれなりの覚悟が必要になります。
 次に、集落の様子を聞きます。自治会の範囲や戸数、ご近所さんの様子(高齢者ばかりか、若い人や子どももいるか)など。集落内を地元の人と一緒にぐるっと一周してみましょう。慣れてくると、集落の景観を見ただけで自治力のレベルがわかります。田んぼはしっかり耕作されており、畦や道路際の草刈りが行き届いている、山の針葉樹林は間伐がされて気持ち良い感じになっていればOKです。耕作放棄地だらけ、集落内は草だらけ、山は手入れがされずに鬱蒼としている、竹が繁茂している、壊れた小屋や車などが放置されている、などは限界集落の徴候ですので、慎重になった方が良いです。
 お子さんがいる場合は、保育園や学校の状況を聞きましょう。歩いて行くならその距離。スクールバスの場合も多いです。だいたい小規模な学校だと思いますが、一学年の人数や学校の雰囲気など。集落を回っている間に実際に行ってみてください。
 また冬がどれくらい寒いか、雪の量、道路の凍結状況なども聞いておきましょう。車はスタッドレスタイヤが必須だと思いますが、4WDまで必要かFFで大丈夫か。
 そうして、もう一度家の前に立って、ここで家族で生活している状況を想像してみましょう。いい感じで想像できれば検討を進めて下さい。あまり想像が働かないようでしたらやめておきましょう。空き家との出会いはご縁です。ピンとくるかどうか。移住した人は、「見た瞬間、ここだと思った」という話が多いです。
 あと注意すべきは、完璧な空き家(!)はないということです。何かしらこちらの希望を満たして、何かしらは満たさないということです。すべてを満たすものに出会うまで探すという姿勢では、永遠に見つからないと思います。何をとって何を捨てるか、常に天秤にかけながら空き家の見学をしてください。
 この地域が気に入ったけれども、なかなかぴったりくる空き家がないという場合は、不満があってもすぐに入れる空き家に賃貸で入るというのも賢い選択です。集落は高齢化しており、今後10年でどんどん空き家が出てきます。そこで集落の一員として暮らしながら、これぞというご縁ができたら、改めてそちらに引っ越すということです。
 これぞと思う空き家に出会ったとして、それがまだ空き家バンクには登録されていない物件だとしましょう(その場合が多いと思います)。その後の展開はどうなるでしょう? (つづく)
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